ゾルディック家の次男坊 2【HUNTER × HUNTER】

New Year ページ28

新年ーー

元旦、閑静な街
食べ物屋も洋服屋も、薬局ですら店を閉めている
暗殺家業も例外でなく、年末は多忙ながらも新年には流石にどの業界も殺したい衝動を抑えるらしく閑散期である


なので暗殺家業を生業とするゾルディック家も
新年は家族皆揃って食卓に迎えるのが恒例、と思ったものの、出ていったキルアを除いて次男坊の姿もそのテーブルに見当たらないのだ







「あら、Aちゃんご飯は？」



『ごめ、俺パス……』





ふらふらと、家族が揃うリビングを横切って行ってしまう我らが次男坊の姿はここ数年でこの時期に名物に近いものになっていた


暗殺家業は閑散だ。だがハンターである彼は先に控えるハンター試験の打ち合わせにあの会長から強制的に毎年駆り出されるのだ

新年早々に行われるのがハンター試験





つまり、Aに元旦など無い



ネテロの人使いったらそれはもう想像もつかないほど酷いもので、Aはその日中に帰ってくれば良い程の激務をこなしている




『ざけんなジジィ、てめぇでやれ』



「ふむ、相も変わらず良い威勢だ」





結局、どんなに足掻いたとて最終的にはネテロに半泣きにされて仕事が増えていく一方になるA



年末の繁忙する暗殺業に加えてだ



受験者リストの作成、試験官の最終要請、また試験管と試験内容の打ち合わせ、タイムテーブルの大まかな作成、その他諸々


雑務こそネテロの秘書がこなすものの、大まかな流れを全て投げ出されているA。最悪である、実に、最悪である



母の呼び掛けや執事たちの気遣いを相手してやれる程の余裕を持ち合わせていなかった
なぜだか今日は兎に角帰りたかった、家族の元へ

今すぐにベットに飛び込みたい。そんな衝動に駆られながらもAが向かったのは自室ではなく、片割れであるイルミの部屋だった


当人はまだリビングで家族とおせち料理たるものを箸でつついていた筈だ

扉を開け、部屋の主がいなくてももう構わない程疲弊していた、イルミのベッドに風呂も入らずで申し訳ない思いを感じる暇も無く飛び込んだら堪らないほどに、片割れの匂いに包まれながら意識は深く深く落ちていった






『……い、る』






朦朧とする意識の中で、Aにとってこの瞬間が1番に幸福であった








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