ゾルディック家の次男坊【HUNTER × HUNTER】

Happy Halloween ページ49

「A兄、トリックオアトリート」



『は、甘いぜキルア』




如何にも。といった表情を浮かべながら
弟キルアは諸外国伝統の言葉を吐き始めた






ゾルディック家には世間様と違って
世界的なイベントを楽しむという文化など勿論ない
唯一あるとしたら年末年始くらい、まあ仕事の依頼が増える意味ではクリスマスはかきいれ時である




昔、Aがなにかの文献を見て見つけ出したそのイベントを
子供の頃に執事や両親に山程に吐いていた言葉





トリックオアトリート(お菓子くれなきゃ悪戯するぞ)





合法的にトリート(悪戯)できるなんて、と
見つけた年に早速家中に対して吐き出していた


　

勿論、A以外がそのイベントを楽しもうとはしていない
イルミもミルキも、Aが嬉しそうに言う傍らで興味すら抱いていなかった





それでも、ただ単に子供がお菓子を強請るという
イベントの趣旨を把握した家の使用人たちは
子供らしいAの行動に頬を緩め、毎年お菓子を胸元に隠し持っていたという




Aがいなくなってしまってからは
ゾルディック家からはハロウィンというイベントは無くなってしまっていた





少し残念に思っていた使用人達は
ある光景を目の当たりにして、勤務中にも関わらず思わず頬を緩めてしまったのだ





4男は流石あの次兄に似ているだけある、と
関心に近い感情を抱いていた


キルアがAにあの言葉を吐いていた
数年ぶりに聞くことになった言葉に
思わずAもキルアの頭を撫でた






『その文化、取り入れたの誰だと思ってんの』



「ちえ、A兄に悪戯出来ると思ったのになー」



『来世に期待してな』





むぐり、と兄の細くしなやかな指によって詰められたチョコレートがキルアの口内で甘く溶かされていく





「みんな知らねぇと思ってたのに〜やっぱりA兄の仕業か」





ぷぅ、と河豚の様に頬を膨らますキルアは
本当に子供らしい





『ミルのさ、フィギュアの首全部取ってやれば？』



「うわ！A兄それ最高！」




早速やってくるわ！と足早に去っていく弟の背中を見つめながら
そういえばミルはいつもお菓子食ってるか、と

悪戯失敗によるキルアの不服そうな顔を思わず浮かびあげる





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