5-42 ページ42
まるで恋人のように毎日目覚めの挨拶を交し、朝食を共にして肩を並べて海辺を歩く
時にはAがアームの調整をしてくれたり、車で20分程の市場に行って食料品の買い物にも出かけるようになった
夕食を食べ2人並んでソファに座り本を読んだり他愛もない会話をする
同じベットに潜り込みキスを交わして夜を過ごす
数ヶ月前までシベリアで人間兵器として扱われていたとは思えないほど平穏で幸福な日々を過ごせることは奇跡に近い、全てAのおかげだ
『私この椅子でぼーっとしながら死ぬの、バッキーがちゃんと水やりしてるか見張りながらね』
さほど広くはないが俺達には十分な庭にリクライニングチェアがひとつ置いてある。Aのお気に入りで彼女はよくそこで昼寝を嗜む
この地で死にたい、と言ったAの言葉の意味に心の底から嬉しく思った。彼女は死ぬまで俺とここで過ごすと覚悟を決めていた
「俺より先に死ぬな」
少女のような笑みを含んだ彼女に俺はそれしか言えなかった。喜びの感情と共に彼女に対しての罪悪感も生まれたからだ
これ以上彼女を縛り付けては行けない
Aは俺とは違う。この時代を生き帰るべき場所があり待っている仲間がいる
彼女には彼女の世界がある、俺とは違うのだ
『バッキー？』
暗闇の中ベッドの上で首を傾げ覗き込むA
右手で顔にかかった髪を避け頬に添えれば彼女は無機質な左手を握ってきた。何も言わずじっと見つめられ薄く開かれた唇にキスをする
いつものように洗脳を解くため、という口実でなく懐かしむような愛しさを求めるように
好意の言葉はお互い一度も投げた事はないがAには伝わっているだろう
自分が再び人間らしい感情を持って良いのか戸惑う日々であったが彼女の存在が肯定してくれた
「愛してる、A」
何かを察し、眠りたくない。と眉を下げたAをようやく眠らせ規則正しく寝息を立てる彼女に最後のキスを送る
俺がいなくなっても、君は大丈夫だ
こんなにも人を魅了する力のある彼女を助けてくれるものは大勢いる。お互い依存するのはもう終わりだ
最後にもう一度Aの表情を脳裏に焼き付けて2人で過ごした家を後にした
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 88人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ホーク - 更新楽しみに待ってます！とっても面白いです！ (2020年10月25日 19時) (
レス) id: 914afb4dd5 (このIDを非表示/違反報告)
M-tAnt(プロフ) - 初めまして、今日初めてこの作品に出会いました。読み進めていくうちにどんどん引き込まれます…MCU大ファンの私にとって願ってもみない素晴らしい作品です！ロキが大好きな私にとって、主人公との絡みが私得すぎてもうなんと言っていいか…本当に有難うございます！！ (2020年9月15日 18時) (レス) id: 916efa1534 (このIDを非表示/違反報告)
はな - 更新楽しみにしてます！ (2020年9月10日 22時) (レス) id: 0a0d47c786 (このIDを非表示/違反報告)
no non(プロフ) - 更新待ってましたぁぁぁ！結末が一体どうなるのかめちゃくちゃ気になります！更新応援してます！ (2020年8月27日 19時) (レス) id: de80b1f653 (このIDを非表示/違反報告)
Ruby(プロフ) - 更新楽しみにしてます！ (2020年8月18日 22時) (レス) id: ccc02d9cf9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：リオハ | 作成日時：2020年4月1日 16時
