incompetent-悲しみの構図- (ページ6)

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下校時刻になって校舎を出る
６月上旬の夜はまだ少し明るい

いつも施錠ギリギリに校舎をでるから
運動部も帰っていて出くわすことはそうそう無い

「北斗くんってさ、なんでいつもこの時間に帰るの？」

隣に並ぶ彼女が疑問に思ったことを口にする

「家そんなすきじゃないから」

「あ、もしかして家族と仲悪いとか？」

冗談っぽく笑う彼女に

「そんなとこ」

と、適当に相槌を打てば

「そっか～」

否定も肯定もしないから彼女といることはそんなに苦ではなかった

彼女と別れて家に帰ればすでに家族の靴が玄関に並んでいる
いつも最後に帰ってくるのは大抵俺だった

「ただいま」

「あ、おかえりー。今ご飯出すね」

リビングにいる母に帰ったことを伝えれば笑顔でそういう
着替えてリビングに戻ればすでに夜ご飯が並べられていた

いただきます

と呟いて一人で食べていれば風呂から上がった父親がリビングに戻ってきた

「ああ、帰ってたのか。おかえり」

「うん」

笑顔で目の前に座ってまた話し出す

「今日のごはん、おいしいよな」

「…うん」

「学校、どうだ？」

やっと見つけた無難な話題を振ってくる

「普通だよ。」

「成績表、見せてもらったんだけど北斗は優秀なんだな。そんな北斗の父さんになれて本当嬉しいよ。
小学校の文集も見たけど、夢は警察官なんだって？」

「…ああ、小学生の頃はね。」

「え？もう変わったのか？今は何になりたいんだ？」

エンジンがかかった様にズカズカと踏み込んでくる

「別に。他にやりたいことがあるわけじゃなくて、警察官をやめただけ」

「こんなに優秀なら警察なんてすぐになれるだろう？北斗、自分がやりたいことなら決して諦めちゃいけないよ。」

血もつながらない奴が父親ぶるなよ
その言葉を飲み込んで立ち上がる

「…ごちそうさま」

.

母は再婚した

警察官をしていた実の父は俺が中学生の時に
通り魔殺人犯が起こった現場で亡くなった

母は苦しそうだったけどしばらくして再婚相手を家に連れてきた

母さんが笑顔でいれるなら自分の好きなように生きて欲しいと思い、再婚を受け入れた

新しい父は良い人だとおもう
血のつながらない俺を本当の息子の様に接してくれる
自分の好きなことをやれといい、欲しいものがあれば買ってやるとも言われる

でもなんとなく受け入れられなかった

全部が俺の機嫌取りの様に感じてなんだか違和感だった