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手を振って駆け足で近づいてくる彼女
秋が終わりかけ冬が近づいて来ていた
「お待たせ！今日寒いね〜」
彼女はワンピースにカーディガンを羽織っていかにも大学生らしい格好をしている
今日は待ちに待った水族館へ行く日
「いこ！」
彼女はいつも通り元気よくそう言うと俺の腕を取って走り出した
「そんな急がなくても、水族館は逃げないよ。」
「ここのイルカショー絶対見たいから早くチケット取っとかないと！知ってる？ここの水族館はイルカショーが売りらしいよ！」
「どこの水族館も大体そうだろ。」
相変わらず冷めてるねーと言いながらも尚、彼女は駆け足で進んでいく
その後ろ姿すら愛おしく感じて笑みが溢れた
イルカショーを見た後、彼女はソフトクリームが食べたいと言いひとつ購入すると近くのベンチに座った
「ラブラブで羨ましい！だって」
ソフトクリームを渡して来た店員さんに言われた一言を彼女は繰り返してニヤニヤしている
「なんだよ。言ってこようか？付き合ってませんって。」
「そんなあの店員さんの夢を壊すようなこと言わないであげてよ。はいあーん」
ソフトクリームをスプーンですくうと目の前に一口差し出される
「いらない。」
「はあつまんないなあ。あ！じゃあ今日一日、恋人ごっこするのは？」
「はあ？」
本当いつもいつも突拍子もないことを口にするから疲れる
「嫌なの？手繋いだり、キスしたり「嫌だ」
拒否すれば彼女はあからさまに頬を膨らませて不貞腐れた素振りを見せる
でもそれもすぐに終わって何か閃いたように笑顔に戻れば
「じゃあ、名前で呼んでよ。私のこと。」
「また何で急に」
「だって君、一回も私のこと名前で呼んでくれたことないじゃない。口を開けばキミキミキミキミってわたしにはAって言う名前があるんですけどー！」
「それは…」
言ってやろうか一瞬迷うも、彼女は何も察していないのか頭に？を浮かべている
「君だって俺のことキミキミキミキミ言ってるじゃないか。なんで俺ばっか責められなきゃいけないんだよ。」
「君がずっとわたしのことそう呼ぶから、真似すれば直してくれると思ったの！現に私、初めて話した時君のこと名前で呼んだよ？
だからはい！呼んでみて？」
顔を近づけて来ては俺が彼女の名前を呼ぶのを待ち侘びている
「A…さん？」
「違う」
「…………A」
よくできました！と彼女は笑顔で言った
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作者名：ぴ | 作成日時：2021年4月2日 19時
