incompetent-悲しみの構図- (ページ4)

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入学当初から彼女の周りには人がいた

いつも一人の俺とは対照的で
卒業まで話をすることなんて一生ないと思ってた
別に俺が彼女に好意を寄せていたとかそう言うわけじゃない

あまり他人に興味を持たない俺でも分かるくらい彼女の顔は学年中に知れ渡っていた

でも意外だったのは
彼女も俺を認知していたという事

しかも初めての会話で彼女は自然と俺を名前で呼んだ

不思議だった
彼女が俺みたいな影の存在と関わろうとすること

普段の生活で彼女は俺に話しかけてくることはない
放課後だけだ

でもその方が俺も都合が良かった

変に周りに知られれば根も歯もない噂が立つ
そしてよく俺のことを知りもしない奴がここぞとばかりに悪口をいう

間に受けて傷つくわけじゃないけど
そういう面倒なトラブルは避けたかった

「なあなあ松村」

教室で本を読んでいれば馴れ馴れしく肩を掴んでくるクラスメイト
都合よく使うために話しかけてくるやつはいた
拒否しない俺を陰で奴らは便利屋と呼んでいた

「今日の掃除当番なんだけどさ、替わってくんない？借りは必ず返すからさ！」

悪気もなく笑顔でそういう
一度も借りなんて返されたことはなかったけど特に放課後の予定なんてないから承諾する

「いいよ」

「まじ？じゃっよろしくな」

「ちょっと」

要件が済んで去っていく奴を呼び止めたのは他のクラスの武田だった

このクラスの仲がいい友達に会いに来ていた武田は機嫌が悪そうに近づいてくる

「どうしたんだよA。怖い顔して」

「一回もあんた掃除してるところ見たことないけど、そーゆーこと。」

「え？なんだよ。松村だっていいって」

「それ、私にも言える？」

「は？」

「わたしがおなじクラスだったら、私にも言えるのかって聞いてるの」

イライラしながら彼女は指を奴の胸に何度も刺す

「いや、Aは友達付き合いで忙しいし掃除なんて」

「みんな一緒でしょ。そうやって友達の多さとかカーストとかで判断することいじめと一緒だよ。
弱いものいじめって言葉知ってる？
幼稚園児でもわかるんだよ？」

「わかったよ。松村、やっぱ俺やるからいいわ」

そう言うとバツが悪そうに奴は教室から出て行って武田も自分の輪の中に戻っていった