incompetent-悲しみの構図- (ページ29)

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「なんかショックだよね。みんなに教える側の人が平和な国について抽象的にしか捉えられてないの」

横並びで歩いている間彼女はよほどショックだったのか、さっきのことをまだ引きずっていた

「そんなもんだよ。本気で世界を平和にしようとしてるのって多分君と俺ぐらいだよ」

「やっぱそうなのかな～」

残念だなあと彼女はため息混じりに呟いた

「ったあ！」

急に背中をどつかれて体が前のめりになる
こんなことする奴アイツしかいない

「お前彼女学校に連れ込むとかえろ！」

「どこがだよ、てか彼女じゃねーし」

「友達なのにほんとお前って水臭いやつ～」

首に手が回って無理矢理引き寄せられる形に

痛いから話せと言ってみるものの聞こえないのか全然離さないどころか徐々に力が強くなっている

彼女の様子を伺えば目を丸くして驚いている
そりゃそうだ

「あ、ご挨拶遅れました。北斗の友達の田中樹って言います！」

急に改まってお辞儀なんかし出す

「驚いた」

彼女の第一声が予想外だったのかはい？という表情で田中樹は顔を上げた

「北斗くん、大学に友達いたんだ！」

「あ、やっぱ高校でも友達いなかった感じ？」

「そうなの。私だけだったんだよ。あ、私武田A！」

「Aちゃんか。よろしくね。」

立ち話もなんだし食堂で昼飯でも食わね？、と田中樹が提案すると彼女もその意見に乗ってふたりは横並びで歩き出した

俺ひとり取り残された