incompetent-悲しみの構図- (ページ27)

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彼女から連絡が来たのは秋になった頃、結局俺は躊躇って一度も自分から連絡をすることはなかった

A君の大学に行きたい

退屈な講義を横目に携帯を開けば表示された文字
理由を聞けば夏休み中に手伝ってもらった課題に興味が湧いたのだとか。
普通ならば勉強熱心という言葉で済む話だが、わざわざ講義を聞くために他所の大学に行きたいだなんて本当に彼女は変わり者だと思う。

結果俺は丸め込まれて来週の講義を同行させることになってしまった

「わあ～広いね！ここの大学」

待ち合わせをした彼女は遊園地に来た子どものように目を輝かせている

「君の大学もなかなか広いと思うけど」

「オーキャン来たんだ？」

「まあ、浪人を避けてここも受験したけどね」

くだらない世間話をしていれば教室に着いた
もうすぐ時間だからか人がそこそこ集まっている
後ろから二列目の席が奇跡的に空いていたからそこに座れば彼女も隣に腰を下ろした

「あのさ、念のために言っとくけど」

彼女だけに聞こえる声で言った

「忍び込んでるんだからくれぐれも目立つような真似は「わかってるって！」

満面の笑顔が俺の不安を掻き立てた

「本当にわかってんのかよ…」

その言葉は彼女に届かなかった