incompetent-悲しみの構図- (ページ20)

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「えーこんなにあるの！」

どのくらい課題があるのか聞かれたからわかりやすいようにまとめて書いておいたメモを見せた

「わたしの大学一個もないよ」

「うちの大学変に頭いいから君の大学に対抗心でも燃やしてるんだよ」

「もういっそのこと課題やるのやめちゃえば？」

他人事だと思いやがって…
出てきそうになった言葉を飲み込んだ

「課題やらなかったら単位もらえないらしいよ」

それは僕らの夢に近づくための修行期間が長引くということ
頭の悪くない彼女はすぐにはっとして焦った様な表情をする
目の前の自分のものでもない課題に没頭した

2人で向き合って集中し始めて1時間半が経った頃
先に集中力が切れたのは俺だった
尚もシャーペンを持った手を止めることなく動かし続ける彼女

「なあ」

んー？と書きながら相槌を打つ

「お父さんのこと、殺したいとおもったことないの？」

ピタリと手が止まった

静寂になった部屋で俺はこの質問をしてしまった事を後悔した

なんて謝るべきだろうか、と考え込んでいると彼女は言った

「…あるよ。何回も。」

彼女はノートに視線を落としたまま

「何回も…何回も、頭の中で殺した。
だから私には親なんていないって、そう思ってるよ。」

顔を上げた彼女と視線が交わる

最低な質問をした、それなのに彼女は微笑んでいた