incompetent-悲しみの構図- (ページ13)

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君と会ってもう少しで一年が経とうとするころ俺たちは卒業した
卒業生式辞は彼女が読んだ
式が終わって屋上に行けばもうすでに彼女が来ていた

「同じ大学いけないねー」

フェンスにつかまって景色を眺める君が言う

「初めから受かるなんて思ってなかっただろ」

「でも寂しいよ」

「一日中笑ってた奴が言うセリフかよ」

結局俺はもともと志望していた大学に受かった
それた道に行く前に自分自身で正したと思えば悔しくも何ともなかった

「卒業しても同盟関係は継続だよ」

振り返った彼女は満面の笑顔だ

「大学生になったらバイトもしなきゃならないし単位取らなきゃいけないしで忙しいと思うけど？
ましてや違う大学なんて尚更」

「これは隊長の業務命令」

彼女の業務命令はほぼ理不尽なことに使われていた
現に今も

「わたしが連絡したらすぐに返信する。呼んだらすぐくる。無視なんかしたら死刑だから！」

「はあ…わかったよ」

同盟を組んだ日連絡先を交換したものの一度も使う事がなかった
きっと大学生になっても使わずこの関係も自然消滅だろう

だったらもう一生会うこともないであろう彼女に聞いてみたい事がひとつあった

「なんであの日、俺に話しかけたの？」

また俺に背を向けた彼女

「君が弱い物いじめをしない優しい人だって分かったからだよ。」

聞けば、自分でもよく覚えているあの日
高校生2年生に上がった頃、クラスには俺とは別で浮いているクラスメイトがいた

彼は断れない性格でやつらからいつもからかわれたりわざとぶつかられたり目に見えて分かるいじめを受けていた

奴らの掃除当番の時は必ず彼が掃除をしていた。
ある日の放課後、奴らに今日は用事があるから帰らせてくれと彼が頼んでいた。
特に用事もなかった俺はその輪の中に近づいた

「俺がやるよ」

そういえば彼は一瞬驚いた顔をしてから深く頭を下げると足早に帰っていった

彼女は偶然その場を見かけたらしい

「あの時決めたの。君と、世界を救うって」

「俺はあれから彼の代わりに標的になったけどね」

「でも、かっこよかったよ。
北斗くんはヒーローになれる。

…だから君に、私の秘密聞いて欲しいんだ。
これは私からの業務命令だよ？」

今にも消えてしまいそうな君がそこに居た