incompetent-悲しみの構図- (ページ2)

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刑事side

「なかなか口を割ろうとしませんね」

「金銭目当てなわけでもないし、何か恨みがあったとしか考えられないけどな」

「被害者の子どもと同じ学校に通っていた情報は入ってるんですけど関連性が薄いんですよね。
被害者の娘は学校でも顔が広くて友達が多かったのに対して松村北斗は根暗で知人もいない。
大学だって違うし」

「でも無関係だとしたら尚更訳がわかんねえ。
今回の事件上げれるならもう白旗あげたいな」

つけっぱなしのテレビでは
一日中この事件が報道されている

中年男性を殺害後、自分で通報
死体の横に座り込んで
抵抗することなく身柄を確保された男

動機は何なのか

学生時代の様子から
どんな人物像なのかまで隈なく載せられている

マスコミはどこから手に入れたのか
松村北斗が起こした事件で朝から晩まで話は持ちきりだ

2回目の取調

「もう、話したらどうだ？」

力なく椅子に座る容疑者に言っては見たものの彼は依然口を割ろうとしない

しばらくの沈黙のあと
彼はぽつりぽつりと、なにかを話しだした

「だれかに愛着を抱くと、

周りが見えなくなって
世界がその人と自分だけになる。

でも、突然その人がいなくなったら
自分が独りになったら

世界が真っ暗になって自分すら見失う。

だから僕はもう自分がわからないんです。

死刑にでもしてくれて構いません。
だからもう、」

僕から動機を探すのはやめて下さい_________