もるでお ”「期間限定の家庭教師」“

・　16　母親ともるでおさん ページ25

「…で、話って何？」


気まずい沈黙に耐えられず、自分から母親に話を切り出した。

どうせ怒られるならさっさと早く怒られる方がマシだ。

いつまでも母親が話すまで待ってる程、この空間に居たくない。


「別に大したことじゃないの。ただ…」


私を焦らすつもりなのか、母親は一度溜めると


「今は週一で来てもらってるけど、どうにも週一でしかも3教科なんていくらもるでおさんでも、

さすがに厳しいみたいで、他にももるでおさんはあんたの家庭教師だけじゃない仕事も持ってるから

次からは教科事別々の人が来る事になってるから、話しておこうと思って今話したの」


「ち、ちょっと待って！次からは違う人が私に教えるの？」


ようやくもるでおさんになれてきたと思ったのに、違う人なんて急過ぎる。

少しずつだけど成績だって上がってきたのに、何より分かりやすくて私には合ってたのに、

違う人になったら教え方も変わるからまた出来なくなる。


「いや、だからそうじゃなくて…「Aが思ってるような事にはならないから、そこは

気にしなくていいよ」


「もるでおさん…」


「今まではAに3教科を全部教えてきて見てきたけど、それが次からは教科によって担当が

変わるだけで、理科は俺で数学は違う人っていう感じ」


「そ、それじゃあ私は…」


「Aは気にしないで今まで通りに、勉強してくれればいいの」


気にしないで勉強してくれればいいって簡単に母親は言ってくれるけど、そんな簡単な事じゃない。

私にとってはこの家庭教師を始めることだって最初は不安でなれなかったのに、またもるでおさん

ではない違う人が教科事に代わるなんて振り出しに戻るだけ。


「後、教科事によって違う人って言ったけどそれ皆もるでおさんの知り合いらしいから
　
失礼な態度とか取ったりしたら、どうなるか分かってる？」


「もるでおさんの知り合いなの…次からの違う人って」


「そうよ、そういう事だから頼むわね」


「全員いい奴だから、まぁ個性的な奴らだけど話しやすいと思う、多分」


ポンコツな奴とか、いつもテンション高いうるさい奴とか、そんなもるでおさんの呟きが

聞こえた気がしたけどどんな人が教えてくれるのか、やっぱりちょっと不安だ。

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