輝く個性の物語【スト＊短編集】 (ページ25)

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「A～？来られる？」

彼からそう呼ばれて、いそいそと浴室に向かう。

彼の家のバスルームは車椅子の彼が不自由なく使えるようにリフォームされている。

バスタブに身を沈めた彼が洗いざらしの髪をかきあげる。

「おいで」

そう手招きされ、彼と向き合う形でバスタブに浸かる。

「緊張してる？」

“コクリ”

と頷く私に、ふふっと優しく微笑む彼。

恥ずかしくて、うつむいた視線の先には、湯船に浸かる彼の足。

動かないその足は私が思っていたよりずっとずっと細く……そして脆い。

私は思わずその足に触れる。

感覚のないはずの彼の足が、わずかに動いたような気がした。

「びっくりするよな。……動かないから、筋肉とかも落ちちゃってさ……。

でも、これが今の俺だからさ。

Aには、ちゃんと見てほしかったから。」

そう言って少し上目使いに私を見て、すぐに視線をそらす彼。

不安げなその表情が切なくて……、

もうこんな顔させないって静かに心に誓った。

『

……私ね、前に樹と付き合ったとき、誰からも愛される樹が眩しかった。……すむ世界が違う人って……そう思ってた。

そんな自分の情けない姿を見せられなくて、

……樹から離れた。

樹から逃げたの。自分のちっぽけなプライドを守るためにね。

……でも、ずっと、ずっと後悔してた。

あの時、樹と向かえ合えなかったこと。

……再会できたのはね、奇跡だって思ってるの。

だからね、もう逃げなくないんだ。

……樹が好きだから。

大好きだから。

……この足もね、“ありがとう”って思うの。

』

そう言って彼の足を撫でる。

それまで、うんうん。って静かに私の話に耳を傾けていた彼が、

“えっ？”

って視線あげる。

「樹を守ってくれたから。

この足のお陰で、樹は今生きてるでしょ？」

ひどい事故だったって聞いていた。

命が助かっただけでもありがたかったって。

「……だから、私はまた樹に会えたの。」

“そうでしょ？”

って彼の頬に手を当て目線を合わせる。

「それに……、」

『それに？？』

“チュッ……”

「いつでも私から、キスができる。」

『ふふっ。やっぱA最高だな。』

照れたように彼は笑った。