輝く個性の物語【スト＊短編集】 (ページ22)

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キスする時は ep2 blue 車椅子ページ22

平日はお互い仕事があるし、簡単なチャットのやりとりで。たまに気が向いたら寝る前に電話するくらい。

週末は彼の家に私がお邪魔させてもらう。

それが私たちの時間の重ねかただった。

「お邪魔しまーす。」

『はい。いらっしゃい。』

優しく微笑んで向かえてくれる彼。

ここへくると社会の色んなことからスッと解放されて、意識が全部彼に向かうから不思議。

車椅子に乗る彼にもずいぶんと慣れた。

それはきっと、その笑顔も、少しかすれたその声も、その気遣いや優しさも、私の大好きな彼と全然変わってなかったから……。

『スゲー荷物だなw』

「ふふっ。たまには何か作ろうかなって思って。……樹いっつも適当に済ませてるでしょ？」

『あー……。

でも、ちゃんと食べては、いるよ？』

「ほんとかなぁ？w ちょっと、キッチン借りるね。」

“一つ持つよ”

って、彼はそう言って私の手から買い物袋を一つ取ると、膝にのせて車椅子を進める。

私はそのあとに続いてキッチンに向かった。

「適当に待っててね。30分くらいでできるから。」

っていってもなかなかその場を離れようとしない彼。

どーしたの？って意味で視線を向ける。

『……なんかやだ。Aの側にいたいんだけど。』

っていきなり甘えモード。

「すぐだからっw……ね？待ってて。」

少ししゃがんで車椅子の彼との視線を合わせる。

いいこいいこって甘やかすと、“なんだよそれっ”って照れ笑いしてなんだかんだぶつぶつ呟きながらもリビングに向かう。

そんなやり取りが堪らなく愛しくて、幸せ。

リビングに車椅子を止めて、時間潰しにテレビをつける彼の背中を見ながら急いで料理に取りかかる。

“あー、やっぱりいろいろ買ってきて正解だったわw”

冷蔵庫を空けてそう心で呟く。

その中身は、相変わらず酒類と飲み物くらいしか入っていない状態だった。