輝く個性の物語【スト＊短編集】 (ページ2)

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食器を持った彼がキッチンに入ってくる。

落とさないようにいつもより心なしか緊張ぎみに歩く彼が可愛い。

『A？ここでいい？』

彼は遠慮がちに手を伸ばし、シンク横の調理スペースに食器をおいた。

「うん。ありがとう。もうちょっとで終わるから、北斗先お風呂入っちゃっていいよ。」

彼の置いた食器を手に取り、そう答える。

私はシンクに目線を戻し、再び食器を洗い始めた。

『……A？』

「えっ！？」

不意に耳元で彼の声がして、振り向く間もなくそのまま後ろから抱きしめられる。

「北斗？どうしたの？……濡れちゃうよ？」

『だって……A、全然構ってくれないから。』

彼は抱きしめる腕の力を緩めることなくそう呟く。

耳元で聞こえる、拗ねたような、甘えたような口調と、低く心地のいい声がアンバランスで思わずドキッとする。

……蛇口から流れる水の音がうるさい。

「北斗……好き。」

思わずそう呟く。

『ふはっw なんだそれ？』

「いいじゃん。……もっとしゃべって。北斗の声、好き。」

私は蛇口の水を止め、彼の声に耳を澄ませた。

せわしない平日。

明日も早い。

でも、今はそんなことはどうでもよくて……。

彼とのこんな時間がずっとずっと続けばいいと、そう願っていた。