狂おしいほどに愛してる〈2〉

#54 ページ6

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FS当日。



「あぁどうしよう緊張する…！」


「なんでAが緊張するの笑」


「見てる方だって結構辛いんだからね〜」



私の心配などよそに羽生くんは慣れた手つきでスケート靴の紐を結んでいく。



羽生くんと2人でイルミネーションが輝くあの場所に行った日の翌日、素晴らしい演技だった。


SPが良かっただけにFSはますます緊張してくる。




「言っとくけど、棄権した去年と2014年以外はNHK杯負けたことないからね？」


「えっあれっ？そうなの？」



しまった、そこまで調べてなかった！



「世界一のファンにはまだまだ程遠いね(ﾆｯｺﾘ




……ま、俺の中では一番だけど……。」




「ん？今なんて言った？？」



「なんでもない。ほら、行くよ。」



羽生くんが私の頭をポンポンと軽く叩いた。

スケート靴を履いて身長が増した羽生くんは更に私との身長差が開く。





私がさっきの言葉を聞いていたとは知らない彼は颯爽とリンクに向かう。



"俺の中では一番だけど"



今の私にはそれだけで充分だった。





最終滑走。



名前がコールされ、
羽生くんは勢いよくリンクの中央へ向かった。



相変わらず声援が凄い。


会場壊れちゃうんじゃないの……




音楽が流れ始めるとゆっくりと動き出した。


羽生くんは曲の解釈が天才級だとテレビか何かで見た気がする。
でも本当にその通りで羽生くん自ら音を奏でているような、見ていてとても気持ちが良い感じになる。

俗に言う"音ハメ"っていうやつ？細部までこだわってるなぁと改めて感じる。



前半は全てのジャンプが成功。



あとは後半だけ。



「……頑張れ……」


確か次は4T+1Lo+3Tのコンビネーションジャンプだったはず…！



シャッ！！



氷を蹴る音と共に氷の破片が舞った。



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