泡沫夢幻【わたどう】

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先程お茶会で使われた部屋を見に行ってみたけど、
そこにも椿の姿はなかった。





やっぱり先に帰っちゃったのかな…？
それとももうどこかに出かけたとか…？









いくら探しても見つかりそうにないので
私もそろそろ帰ろうかと、外に出たその時、






庭の大木の下で、じっと立っている椿を見つけた。









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…もしかして、私のこと待っててくれてる…？





いやいや…、そんなわけない。

……そんなことがあるわけない、と思いつつ、
もしそうだったなら嬉しすぎる。







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彼に会う前にちゃんと身だしなみを整えなければ。

一度物陰に隠れて、前髪を軽く整え、
着物も気崩れていないかチェックした。






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…よし。


いざ、声をかけようと一歩踏み出した刹那、








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さっきまで椿と対決をしていた花岡さんが
私の目の前を通りかかった。






一瞬だけ目が合った気がして、体が固まる。



そのまま動くことが出来ずにいると、
彼女はどんどん椿の元へ近づいていく。









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＿＿＿＿＿＿＿＿…だめ…、あの二人を、近づけてはいけない。









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なぜだか分からないけど、直感的にそう感じた。




それなのに、体は全然動かなくて、
ただじっと見つめることしか出来ない。







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…………お願い…、何も起きないで。


そう願いながら、ぎゅっと手のひらを強く握る。









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彼女が、椿の前を通り過ぎようとした時、
椿が、彼女の腕をｶﾞｼｯ…と掴んだ。

……そして、









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椿｢…ねえ、あんたさ、









…………………………俺と結婚しない？｣








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ｻｧ…、と風が吹く。




時が止まったのかと錯覚するほどの静寂。









.








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今………、……………なんて言った……？






彼の口から出た、あまりに衝撃的な言葉のせいで、
頭が真っ白になって何も考えられない。


ﾄﾞｸﾄﾞｸとうるさい心臓が呼吸を苦しくさせる。








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｢……………っ〜……｣








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これ以上ここにいたら自分が壊れてしまう気がして、
私はその場から逃げ去った。








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