白雪姫は夢を見る Ⅲ (ページ10)

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68.バク転ページ10

宮舘side

　Aの減量はかなり順調なようで、増えてしまった分を1週間もしないうちに戻したようだった．

　体は細くて小さいのに、たくさん食べて増えてしまうと恥じらう…本当に、どこをどう取ってもかわいい．

　ダンスにキレも戻ってきたし、とりあえず安心だ．

　今はAと2人でバク転の練習中．

　Aがバク転をできるようになりたいと相談してきて、俺が先生をやっている．

　側転や倒立は軽々しくできるのだが、バク転ができないのが悩みで、ここ2、3ヶ月ほど、隠れて練習していたらしい．

　「着地が上手くできないんだよね…」

宮舘「多分Aは軽いから、自然とつま先で着地しようとしちゃうんだよ．

　足の裏全体で着地するように意識してみて」

　「…よし！」

　Aが勢いよく助走をつけて、手を床について空中でクルッと体を反る．

　俺はAを支えるように背中を持ち上げた．

　“ダンッ！”

　「おお！？」

宮舘「今の、すごく綺麗だったよ．

　着地も完璧だったじゃん」

　「本当に！？

　舘さんの補助無しでやってみていい！？」

宮舘「わかった、気をつけてね」

　Aがもう一度勢いよく助走をつけて、またバク転をする．

　“ダンッ！”

宮舘「…すごい、完璧だよ！」

　「やったー！」

　ぴょんぴょんと飛び跳ねるA．

　バク転ができるようになって嬉しいのだろう．

　「これでまたみんなに1歩近づけたよ！」

　…バク転ができるようになりたい理由がそれ？

　もっとできるようになったらカッコいいからとか、パフォーマンスのバリエーションが増えるからとかじゃなくて…

　Aは常に、俺たちを憧れとしても見ているということか．

　「えへへ！ありがとう、舘さん！」

宮舘「…A、こっち来て」

　俺は腕を広げた．

　Aはぱあっと明るい顔になって、俺の腕の中に飛び込んできた．

　嬉しそうに笑っているAの顔を見て、無性に抱きしめたくなったのだった．

　「舘さん、褒めて褒めて〜！」

宮舘「Aは頑張ったよ、すごいことだと思う」

　「えへへ〜！」

　Aの頭を撫でる．

　大好きなAの成長をサポートできて、俺は大満足．

　今度は一緒にもっと難しい技を練習してみようかな．

　俺もまだ動けそうだからね笑．

　これからも一緒に成長していきたいな、A．