白雪姫は夢を見る Ⅲ (ページ6)

今日:49 hit、昨日:38 hit、合計:35,050 hit

64.かけがえのないページ6

渡辺side

　なんだよそれ…

　俺たちの元を離れて、女子のグループで活動するってことか…！？

　…確かに、Aは女子グループにいればもっと輝けるかもしれない．

　でも…

渡辺「…それで、何て答えたんだよ…？」

　「…断ったよ、ちゃんと．

　私にとってみんなは…かけがえのない存在だから」

　正直、この一瞬でかなり焦った．

　Aが俺たちから離れてしまったら…

　俺たちはもう、何もやっていけないかもしれない．

　「でも…もし翔太くんや他のみんなが、私を少しでも邪魔に思っていたら…

　グループや事務所の移動も視野に入れようかな、って…」

　…A、すっごい泣きそうな顔してる．

　そういえばA、酒弱いんだっけ？

　今の話を聞いて、泣きそうなのはこっちなのに．

渡辺「…邪魔だなんて、少しも思ったこと無ぇよ」

　俺は立ち上がって、Aをそっと抱きしめる．

渡辺「Aにとって、俺たちはかけがえのない存在なんだろ？

　俺たちにとっても、Aはかけがえのない存在なんだよ．

　むしろ俺たちの方がAに迷惑かけてんじゃないのかって心配なぐらいだし笑」

　「そんな…！

　私はみんながいてくれるだけで嬉しいよ…！」

渡辺「…それも、俺たちも同じ．

　 Aがいてくれるだけで、自然と心が和らぐっていうか…

　 Aがとにかく大切なんだよ、俺たちにとって」

　「翔太くん…」

　Aがポロポロと泣き始めた．

　すかさず俺はAの頭を撫でる．

　「私、これからも頑張るよ…ぐすっ…」

渡辺「ああ、俺たちもいるからな」

　…良かった．

　俺たちの存在が、Aにとってかけがえのないものだった．

　俺たちのことを想っていたから、Aはあの女の話を断った．

　Aの心の中に、ちゃんと俺たちがいる…

　それが素直に嬉しかった．

　Aが落ち着くまで、俺はそっと抱きしめていた．

　それから数分後、店から出た俺たち．

渡辺「うぅ、結構冷えんな…

　 A、大丈夫か？」

　「あれぇ、翔太くんが2人いるよぉ…？」

　フラフラと歩くA．

　俺も酒は強い方じゃないからな…

渡辺「1人で帰れるか…？」

　「大丈夫だよぉ！

　私、こう見えてもしっかり者なんだからぁ！」

　ものすごく心配だが、俺は明日も仕事があるし、送ってやる時間も無い．