白雪姫は夢を見る Ⅲ (ページ45)

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88-2.俺より大人な君ページ45

深澤side

　30分もしないうちに、テーブルに料理が並べられていた．

深澤「うっわ、全部美味そう！

　全部食べていいの！？」

　「いいよ、ふっかさんのために作ったんだもん」

　久しぶりに口を開いてニコッと笑ってくれて、とりあえずは安心．

　その後の食べている時や一緒に皿洗いをしている時の会話はいつも通りだった．

　新曲やメンバーの話だったり、最近仕事で行った場所の話だったり．

　少し違うとしたら、さっきまでのAとは違って、今は大人な雰囲気のAに変わっている気がする．

　今日俺が見た雑誌のAとどこか似ているような…

　交代でお風呂に入って髪を乾かし合ったり、一緒にストレッチをしたり．

　いつも通りな気がして、俺もいつも通りAに接していた．

深澤「A、泊まるでしょ？

　ほらほら、ベッドが待ってるよ〜？」

　ベッドに先に潜って、隣の空いたスペースをポンポンと叩く．

　けれど、Aはなぜか俺が貸した服から自分が着てきた服に着替えていて．

　「ごめんねふっかさん、今日は帰るね」

深澤「え…？」

　俺は慌ててベッドから出る．

深澤「も、もう遅いのに…？」

　「うん、早くしないと終電逃しちゃうから．

　じゃあね、ふっかさん」

　今すぐにでも家を出ようとしているAの腕を掴んだ．

深澤「どうしたのよ今日…

　いつもなら“泊まってくー！”とか言って、ベッドに潜り込んでくるのに…」

　「…」

深澤「黙ってちゃわかんないよ…

　俺が何かしたなら教えて？」

　「…だって、ふっかさん…

　あの雑誌の私、見たんでしょ？」

深澤「え…？」

　「男の人をあんな乱暴に扱って…

　仕事だからって気合い入れてやったけど、よく考えたら普通に最低な女だって…

　ふっかさんもきっと、こんな私を拒絶してるんだって…！」

　…何を言っているんだこの子は．

深澤「そんな理由で帰ろうとしてたの？」

　「だって…嫌われたくなかったから…」

　弱々しい声で呟くAの腕をグイッと引っ張ると、俺の腕の中にすっぽり収まった．

深澤「そんなんでAを嫌う訳無いでしょ〜？

　むしろAの成長が見れて、俺は嬉しかったよ」

　「成長…？」

深澤「あんな表情を男に見せられるのは、相当なスキルを持った大人だけだよ？

　 Aも成長して、大人になったって訳！」