白雪姫は夢を見る Ⅲ (ページ44)

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88-1.俺より大人な君ページ44

深澤side

深澤「おっと…」

　たまたま通りすがった本屋の入り口付近に、Aが表紙を飾った雑誌が置いてあった．

　まぁね？メンバーの1人だし、ちょっとはチェックしてもいいよね？

　そんな感じでペラっと中身を見てみた．

　するとまあびっくり．

　男相手に色っぽく生々しい表情のAがいた．

　相手役の男を鎖で縛って拘束したり、足で踏んづけたり．

　なーんかモヤっとするんだよね．

　別に俺がそういうプレイをされたいとかそういう訳じゃないんだけど…

　俺たち以外の相手にあんな表情を見せるのが気に食わない．

　仕事だからっていうのはわかっているし、俺も成長しなきゃいけない．

　でも…

　「あっ…ふっ、か、さん…！」

　不意に俺の下で乱れるAを思い出す．

　俺を求めて一生懸命になって、終わった後はギュッと抱きしめてくれる．

　そんな優しさで満ちたAが、こんなドSな表情を見せてきたら…

　俺はたまらなく自分が恥ずかしくなった．

　雑誌をパァン！と閉じてバァン！と机に置いて、何も無かったかのように本屋を通りすぎる．

　後ろにいた人たちから「えぇ…」と言われたことは気にしない．

　俺はなるべく早足で帰って、Aを家に呼んだ．

　「ふっかさぁぁん！」

深澤「うぎゃあっ！？」

　「久しぶりぃ！会いたかったよぉ！」

　玄関のドアを開けた瞬間に飛びついてくるA．

深澤「俺も会いたかったよ〜…」

　Aをギュッと抱きしめて、家の中に入れてあげる．

　「食材たくさん買って来たんだ！

　お腹空いてるよね？すぐにご飯作るね！」

深澤「マジ？あんがと！」

　自宅から持ってきたであろう紫色のエプロンを着て、テキパキと料理を始めるA．

　「〜♪」

　鼻歌を歌ってニコニコしていて、なんだかご機嫌そう．

深澤「…ねぇ、A」

　「なぁに？ふっかさん」

深澤「雑誌、見たよ」

　野菜を切っていた手がピタッと止まって、Aの顔が一瞬で真っ赤になる．

　「な、中身は見た…？」

深澤「うん、見た」

　「……」

　止まっていた手がものすごいスピードで動き始めた．

深澤「ちょちょちょ、指切っちゃうよ？」

　俺の言葉を全く聞こうとしない．

　あれ…もしかして俺、怒らせちゃった…？

　俺はそろ〜っとキッチンを離れて、リビングで大人しくテレビを見始めた．