白雪姫は夢を見る Ⅲ (ページ30)

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79-1.君のままでページ30

宮舘side

　ドームでのライブが決まって、着々と準備を進めていく．

　演出や衣装にメンバー全員が何かしらの形で関わって、俺たち全員でライブを完成させようと努めている．

　特に1番意見を出しているのがAだった．

　「全体的に2階席に向かってのファンサが少ないと思うから、もうちょっと派手な演出をつけてみてもいいと思うな．

　 2階席の人にも届くような、パンチの効いた演出があったら嬉しいかも！」

　Aがファンの人たち目線の意見をよく出してくれて、すごく参考になっている．

阿部「じゃあ、この2曲の間に何か派手な演出をつけようか．

　 2階席の人たちにも届くようにね？」

　「うん！」

　自分の意見が採用されると満足そうに笑うA．

　最高のライブを完成させたいという気持ちは全員一緒なんだけど、Aは特にその気持ちが強い．

　今までたくさん心無いことを言われてきたけど、ライブはそういうことを言ってくる人たちを黙らせるいい機会なんだと思う．

　いや、単純に楽しみなだけかもしれない．

　メンバー全員でたくさん意見を出し合って、気がついたらもう夜遅くになっていた．

宮舘「お疲れ様、お嬢さん」

　「わあっ！？」

　スタジオを出てぼーっと突っ立っているAのほっぺに、さっき自販機で買った水をピトッと当ててみた．

　驚いたAはその場で飛び上がって、恥ずかしそうに顔を赤くする．

　「舘さん…！」

宮舘「たくさん頭使って疲れたでしょ、これ飲んで」

　「ありがとう…」

　俺から水を受け取って、ゴクゴクと飲むA．

　ぷはっとペットボトルを口から離すと、俺に向かって笑顔を向けた．

　「舘さん、ライブ楽しみだね！」

宮舘「うん、本当に楽しみだよ」

　「またみんなのファンが増えちゃうな〜！」

宮舘「俺たちだけじゃないよ．

　 Aのファンだってたくさんできるよ．

　 Aのおかげで男子のファンも増えてるみたいだし、一石二鳥だね」

　「いやいや！舘さんたちのおかげだよ…！」

　…なんか怪しい．

　いつもだったら「それほどでも〜！」とか言うんだけど、今日はやけに否定的だ．

　…きっと楽しみの反面、不安なんだろうな．

　“ギュッ…”

　「！」

　俺はAのことを後ろから抱きしめる．

　久しぶりにこうしてAを抱きしめることができて、俺は嬉しい．