白雪姫は夢を見る Ⅲ (ページ24)

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75-2.名前で呼んでよページ24

阿部side

　Aが口をもごもごさせて、ようやく声を出した．

　「…りょ、りょうへ、くん…」

阿部「あんまり聞こえなかったな〜」

　「りょ、亮平、くん…！」

阿部「…！」

　Aに初めて名前を呼ばれた．

　その瞬間が、ものすごく嬉しかった．

　Aとの距離が一気に近く感じた気がする．

　別に距離があった訳じゃないけどね．

阿部「…A、もし良かったらなんだけど…

　これからも俺のこと、“亮平”って、名前で呼んでほしいな」

　「え…！？」

阿部「逆にどう？

　俺がAのこと、“白雪さん”って呼んだら」

　「…寂しい、かも…」

阿部「…1回名前で呼ばれちゃったし、“阿部ちゃん”呼びは寂しくなっちゃうなぁ…」

　「い、意地悪…！」

阿部「意地悪じゃないよ．

　 …それに、理想の彼女に相応しい人に名前で呼ばれたら、めちゃくちゃ嬉しいもん」

　「っ…！」

　俺はAに笑いかけた．

　Aの顔が更に赤くなる．

　やっぱり俺、意地悪なのかも？

　でも、Aに名前で呼ばれたいのは本当のこと．

　俺は欲に忠実だからね．

阿部「じゃあ俺、今日からAのこと“白雪さん”って呼ぼうかな〜」

　「そ、それはやだ！」

阿部「じゃあ、“亮平”って呼んで？」

　「…亮平くん」

阿部「なに？」

　「…やっぱ意地悪！」

　ぷくーっとほっぺを膨らませて怒るような表情をするA．

　でもなんか、どこか嬉しそうにしている．

　俺はそんなAが、無性に愛おしく思えてきた．

　俺は椅子から立ち上がって、Aを後ろから抱きしめる．

阿部「かわいいよ、A〜！」

　「嬉しくないー！」

　…ふふっ、本当にかわいいよ．

　それからAは、俺のことを“亮平くん”と名前で呼んでくれるようになった．

　最初はぎこちない感じがあったけど、だんだん慣れてきて．

深澤「阿部ちゃん、いつからAに名前で呼ばれるようになったの？」

阿部「んー、気付いたらかな？」

深澤「俺も“辰哉”って呼ばれたいな〜」

渡辺「名前で呼ばれんの、結構嬉しいぞ」

向井「めっちゃ親しみ感じるで〜！」

佐久間「名前呼びマウントか！？笑」

　俺の理想の彼女は、名前で呼んでくれる人．

　感情が豊かで、すぐに照れちゃうかわいい子．

　そんな子がすぐ近くにいるなんて、生殺しだよね．