白雪姫は夢を見る Ⅲ (ページ23)

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75-1.名前で呼んでよページ23

阿部side

　「阿部ちゃーん！」

阿部「A、どうしたの？」

　ニコニコと笑顔で俺の元に駆け寄るA．

　この間とんでもない事件があって、Aが関係していたらしいんだけど…

　そんなこと無かったと思わせるくらいの元気の良さ．

　まあ、これがAの良いところなんだよね笑．

　「新しいユニット曲、私と阿部ちゃんの2人じゃん？

　恋人同士の曲になってるし、阿部ちゃんとたくさんお話ししよう思って！」

　確かに、歌詞やその歌に込められている意味を理解すると、上手く歌える方法がよくわかるとか言うからね．

　目をキラキラさせて俺を見つめるA．

　ふふっ、かわいい．

阿部「いいよ、隣座って？」

　「うん！」

　Aが俺の隣の椅子に座る．

　俺は2人分のホットココアを作って、Aにカップを手渡した．

阿部「何について話す？」

　「うーん…あ！

　私、阿部ちゃんの理想の彼女像が聞きたい！」

阿部「え…？」

　俺の理想の彼女か…

　頭の中でぱっと思い浮かんだ彼女像を、とりあえずAに伝えてみる．

阿部「…優しくて明るくて、たくさん笑ってくれて、人のことを悪く言わない人かな．

　あとは…俺のことを応援してくれる人！」

　「なるほど〜！」

　俺が今、頭の中に浮かべている理想の女性．

　そんな女性が今、目の前にいるとは当然言えない．

阿部「…あ、あとは名前で呼ばれたいかも」

　「名前で？」

阿部「そうそう．

　俺、普段はみんなから“阿部ちゃん”って呼ばれてるでしょ？

　彼女さんにだけ“亮平”って名前で呼ばれたら、なんか特別感あっていいな〜って」

　俺はAの方をチラッと見る．

　Aはココアを飲みながら、何か頭を抱えているようだった．

　「確かに名前で呼び合った方が、距離感じなくていいかもね！

　でも、阿部ちゃんは阿部ちゃんなんだよな〜」

　うーん、アピールはちょっと失敗みたい．

　でも、ちょっと試してみたいことがあって．

阿部「A、ちょっと俺のこと、名前で呼んでみてよ」

　「え…！？」

　Aの顔がいきなり赤くなった．

　普段から“阿部ちゃん”呼びが定着しているA．

　名前で呼ぶことってそんなに恥ずかしいことなのかな？

　「恥ずかしいよぉ…」

阿部「亮平って呼ぶだけだよ？」

　「うぅ…」