episode.26 ページ26
しばらく進んでいくうちに、一軒の屋台が目に入った。
それは、優しい香りが漂うベビーカステラ。
導かれるように人の流れを外れ…、一袋購入した。
「…美味しい……」
私何しに来たんだろう…
ふと、そんなことを思った。
.
だんだん雪が強くなってきた。
その中で、人混みは更に大きくなっていく。
その輪の中心にあるのは、大きなクリスマスツリーだ。
やっぱり…見覚えがある。
なるべくその近くに寄ろうと、人をかき分けて。
周りを少し見渡してみるけど…
すっかり暗くなった空の下。
こんなに人がいたら、仮にあの人が来ていたとしても巡り会えるかどうか…
.
朧(おぼろ)げに残る記憶の中、彼の姿を探してみる。
人混みにすっかり埋まってしまっている私より、背が高い彼の方が、きっと目立つだろう。
もし…見つけられるとしたら、私の方。
時計を見ると、いつのまにか、クリスマスツリーの点灯時間まで残り5分を切っている。
嘘、もうこんな時間なの…？
もう一度、辺りを見渡すけれど。
その中にあの人の姿は見えない。
やっぱり、単なる夢物語だったのかもしれない。
カウントダウンが始まるなか、引き返そうと身を返した。
人の流れを逆らったせいで、誰かの足につまずいてバランスを崩してしまった。
転ぶ……！！
そう思って咄嗟に目を瞑った。
.
「……Aちゃん…！！」
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作者名：みるくかぷちーの | 作成日時：2021年11月25日 20時
