僕は僕 ページ4
三郎side
僕が屋上の鍵をチラつかせると、彼女は明らかに驚いた顔をした。
｢なっ……どこで！？え、てかなんで持ってるの！？｣
｢ふふん、僕にかかれば屋上の鍵くらい簡単に手に入れられるのさ｣
｢うわー羨ましい。これから屋上入りたくなったら山田くん呼ぼっと｣
｢はー！？ふざけんな｣
僕が少しムキになると彼女は大笑いした。不思議とムカつくことはなく、僕はそのまま歩き出した。
彼女は僕の横を歩きついてきた。
｢いやなんでついてくるのさ｣
｢んー、いや担任との面談バックレようかなって思って｣
｢……はぁ？ホントに馬鹿なの？｣
愉快そうに笑う彼女は、僕の横を歩く。
そして僕の目をじっと見つめると問うた。
｢山田くんは、いま楽しい？｣
｢楽しいって……別に普通だけど｣
｢私ね、いつも心がぽっかり空いたような何か物足りない気持ちなの。誰と居てもさ｣
｢そんなの思春期ならよくあることだろう｣
そうだねとAは言って微笑んだ。
結局本当に面談を放り出して帰ってしまった。
……
ディビジョンバトルに備え、僕は二郎とラップバトルを行う。互いのスキルを磨くためだ。
一兄はまだ仕事から戻っていない。今日はいち兄が1人で依頼を引き受けた。少し遅くなるらしい。
二郎と共に家に帰り、二郎は夕飯の支度を始めた。
僕は自分の部屋に行き、思いつくリリックをノートに書き込んでいく。
……駄目だ、こんなんじゃいち兄の足を引っ張るだけだ。
オマケになるな。僕は僕の、元TDDの山田一郎の弟としてではなく山田三郎としてのリリックを、韻を踏め。
ペンを持つ手に力が入る。ペンだこにペンが食い込む。少し血が滲み、ペンに血が付着する。
歯を噛み締め、The Dirty DawgのCDを取り出す。
それをパソコンに入れ、ヘッドフォンを付けて目を凝らさず窓の外を見る。
耳からは圧倒的勝者である音が流れている。
追いつけないのか、これを超えることは出来ないのか。
僕はノートを閉じた。ヘッドフォンを投げ捨てた。
そして部屋を出た。
｢おい三郎〜そろそろ出来るぞ。箸並べてくれよ｣
二郎の声を無視した。いや無視というより返事が出来なかった。うまく話せなかった。
そのまま僕は家を出た。
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海老天ぷら - 虹(2)さん» コメントありがとうございます！帝統の作品も読んでくださったとのことで身に余る言葉を頂き、とても嬉しいです！拙作ながら、そう思ってくださるだけで非常に嬉しいです。更新不定期で申し訳ないのですが、頑張ります (4時間前) (
レス) id: 76c9501c32 (このIDを非表示/違反報告)
海老天ぷら - りんごさん» 素敵なお言葉ありがとうございます！思春期の多感な時期の色々な心情を私なりに表現しているので本当に嬉しいです！頑張ります！ (4時間前) (レス) id: 76c9501c32 (このIDを非表示/違反報告)
虹(2)(プロフ) - もう続きは書くことが出来ないのかもしれないけど私はこの作品がずっとずっと大好きです！！！このコメントが主様に届きますように、、 (5月10日 5時) (レス) @page44 id: 12afbbff79 (このIDを非表示/違反報告)
虹(2)(プロフ) - この作品に限らず帝統の作品も読ませていただきました…どちらも大号泣してしまいました、、表現の仕方などすごいすきです、、とても現実的で心にぐっ、ときました。小説でここまで泣いたのは主様の作品が初めてです、、！！ (5月10日 5時) (レス) @page44 id: 12afbbff79 (このIDを非表示/違反報告)
りんご - この作品は一言では表せないそんな素敵な作品に感じました。三郎と主人公の心情の変わり方が自然だなって思いました。是非とも作品の続きを見たいです！ (4月1日 10時) (レス) @page44 id: 169b1ab724 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：海老天ぷら | 作成日時：2020年2月10日 15時
