【WT】君色症候群 (ページ3)

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君３ページ3

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「…やっぱゆっくりしてってください、美味しいどら焼きがあるんです！」
「え、ちょっとマリオちゃん！？」

なんて事も数分前、生駒隊の隊室には普段とは打って変わって静けさが訪れていた。
何ともいえない気まずい空間で、誰も話を切り出すことができない。いや、うずうずとした体が止まらない男が一人。

「隠岐センパイの彼女ですか！？」
「はいアウトーーーッッッ！」

言わずもがな、南沢は部屋の隅に連れていかれる。隣で思いっきり咽た生駒は水上に介抱されていた。

「ちゃいますよ、Aちゃんは従姉なんです」
「お前さり気にAちゃんなんて呼んで…。イコさんが泣くで」
「…Aちゃんっていうんや」
「そっち？」

いつもより静かな生駒に隠岐は呆れながら答えた。
従姉という言葉に彼女はどこか居心地の悪そうな顔で会釈をする。また髪がさらりと揺れた。
対してつまらなそうな南沢は「ふーん、じゃ、彼女じゃないんすね」と唇を尖らせた。

「せや、Aちゃんこの後まだ仕事あるん？」
「あ、ううん、デスク回り片付けたら帰ろうと思ってたけど…。何か用事？」
「いや、もうこんな時間やし一人は危ないからイコさんにでも送ってもらおうおもて」
「ブッ」
「うわ、きたなっ」

にこやかに答える隠岐は先程事情を伝えられており、既に隊員も楽しそうな雰囲気を醸し出している。
珍しく一人壊れたように焦る生駒を「からかってやろう」という魂胆は透けて見えた。なんだかんだいって隊長の恋路が気になるのだろう。二ヤついた空気のまま、特に誰も反応しない。
ぱちぱちと目を瞬かせる彼女だけが、この思惑に気づいていないのが見て取れた。

「大丈夫だよ、いつも一人で帰ってるし。それに生駒さんに悪いよ。」
「まーまー、ここはお言葉に甘えてや。ほんまは僕が送りたいんやけどちょっと用事があんねん」
「そうっすよ、お姉さん美人だから危ないっす！」
「ばっかおまえっ」

ギャーギャーと騒ぐ彼らの中では既に決定事項なのだろう、隊員によってぽいぽいと慌ただしく身支度が整えられていく。数秒後にはトリガーを解除した生駒が立たされていた。

「…あの、ほんとに無理しなくても…」
「ほ、ほ、ほほほんまに嫌ならすぐ断ってくれて全然…」

そういう彼は無表情だが、なんだか顔色が赤い。目線は合わないが、こちらの様子を伺っているのが見えた。

「…じゃあ、途中までお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします……」

おずおずと頭を下げあう。なんだか気まずくなりそうな気がした。

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