昨日の敵は今日も敵？ (ページ41)

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『どした？』

帰り道、心ここにあらずの私を、隆二が心配そうに見下ろす。

『ううん。晩ごはん何がいいかなぁって』

『あー、晩ごはん……味噌汁あるやつ』

和食かよー
めんどくさいなぁ
簡単なパスタにしてやろうと思ってたのに…
聞くんじゃなかった(泣)

スーパーに寄って、めんどくさいからお刺身買おうとしたら、ぶりの照り焼きがいいとか、かぼちゃのそぼろあんかけが食べたいとか言い出すし

でも、そう言われると作ってあげようって思っちゃうんだ。
惚れた弱味ってやつ。

家に帰って、夕食の準備に取りかかる私と、お風呂掃除をしてくれる隆二。

そぼろを作りながら、話す順番を間違えないように頭の中で何度も組み立てる。

『先にお風呂入る？』

『メシ食ってからにするわ。
なんか話したいことあるんじゃねぇの？』

やっぱり隆二は私の事をよくわかってる。

何もかも済ませた後じゃ、もし、気まずい雰囲気になったら困るもんね。
お風呂でワンクッションおくのも悪くない。

向かい合わせでテーブルについて、手を合わせる。

『あのね……』

『うん』

私は、大きく息を吐き出して、気になっている事を話した。

幼なじみから恋人になって日が浅いこと
付き合いは長いけど、恋人としての時間をもっと過ごしたいこと
結婚した後の仕事の事とか、そういうの話し合わないでいること

『隆二が急いでる理由が分からないの』

俯いている私の視界に隆二が箸をおくのが見えた。

『付き合って間もないけどさ、俺らはそれ以上の関係じゃん。取り繕うこともなく、お互い素を晒してきたわけじゃん』

『うん』

『お前が朝弱いのも、怒ったらヤカラ口調になっちゃうのも、なんだかんだ優しくていいやつって十分すぎるほど知ってんだよ』

『うん』

『て、これは表向きの話で、ほんとは不安なんだよね』

隆二の言葉に驚いて顔を上げると、困ったように眉を下げていた。

『不安？……なの？』

『そりゃ不安だろ。お前のこと何年も想い続けてるやつがすぐ側にいんのに』

『でも…友達って』

『また弱ったとこ襲われんだろ』

えぇー
それに関しては何にも言えないんだけど

『紙きれの約束かもしんねぇけど、それでも俺は早く俺のもんになって欲しい。』

テーブルの上で握られた隆二の手の甲を見ながら、話して良かったって思えた。

隆二の本心が聞けたから