9 ページ9
一瞬、許してもらえたと思ったのだろう。チャニョルに安堵の色が浮かんだ。
けれど、続く私の発言に、その表情は驚愕と絶望が入り混じったものへと変化した。
今まで何があっても別れ話が出たことはなかった。だからきっと、私の言ったことが信じられないのだろう。チャニョルは珍しく固まったまま動かなかった。が、急にふっと笑いをこぼしたかと思うと、
CY「…冗談だろ？」
私を嘲るように、チャニョルはそう言った。
冗談で、別れ話なんかすると本気で思っているのだろうか。私がどんな気持ちで別れを切り出したかも知らないくせに。どれだけ悩んで、どれだけ苦しんだかも分からないくせに。
気付いたら私は、チャニョルの頬を叩いていた。パァンという乾いた音が響く。チャニョルはまたもや放心状態だ。
CY「っ…A？」
「人の気も知らないで。よくそんなこと、言えるね」
CY「落ち着けって…悪かった。ほんとに、もう絶対浮気しねーから。な？」
「そんなの信じられると思う？裏切られたの、1度や2度じゃないよね」
CY「…だから、今回は本気で…」
「ホテルまで行って！よくそんなこと言えるね？昨日のカトクで、私、会いたいって送ったのに…その時、なんとも思わなかったんだよね？だから女の人と平気でホテルに行けたんだもんね？」
CY「違うって、A、」
「都合の良い女はもう嫌なの。だから別れる。もう決めたことだから」
私はチャニョルの胸を突き放すと、振り返りもせずに家を出た。追ってくる気配はない。これでいい。これで終われる。勝手に溢れ出す涙を必死に拭いながら、私はひたすら、自分にそう言い聞かせた。
翌日から、毎日何通ものメッセージがチャニョルから送られてきた。
もう1度話がしたい。考え直してほしい。せめて返事をくれ。
勿論、全て無視した。電話も着信拒否をした。
けれど、連絡先を消去することまではできなくて。
最低なことをされたし、今でも許すことはできないのに、私はこんな状況でもチャニョルのことが嫌いになれなかった。
別れる。その決意は変わらない。
けれど、あんな男のことが、まだ好きな私は、本当にどうしようもないと思った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 513人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：にょるなび | 作成日時：2018年2月20日 19時
