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俺達の進行方向に見覚えのある人物の姿を捉えて、俺は思わず立ち止まる。
必然的に隣の女も立ち止まり、どうしたの？と声をかけられるが、驚きのあまり声も出なかった。
なんで、こんなところにAがいるのだろう。ずっと会いたかったし話をしたかった。
けれど、タイミングとしては最悪だ。現にAは、俺と隣の女を交互に見てから表情を曇らせている。
きっと、この女が浮気相手だということには、すぐに気付いただろう。
「何回も連絡してくれたから、もう1回話しても良いかなって、思ったんだけど…やっぱり、口だけだったんだ？」
CY「違う、待てってA、話せば分かるから…」
『あの。あなたってもしかして、チャニョル君の彼女さん？』
「……だとしたら、何ですか」
俺にほとほと愛想を尽かしたと言わんばかりに顔を顰めて帰ろうとしたAを呼び止めたのは、なんと俺に引っ付いている女だった。
Aを立ち止まらせてくれたことは有り難いが、嫌な予感しかしない。
とりあえず女を引き剥がして帰らせよう。Aとの話はそれからだ。
俺がそう思って行動を起こすより早く、女がAに向かってとんでもないことを言った。
『単刀直入に言うけど、チャニョル君にあなたは相応しくないわ。さっさと別れてくれない？』
CY「おい、お前！」
『チャニョル君だって、彼女じゃ満足できないから浮気してるんでしょ？浮気される彼女さんにも原因があるんじゃない？』
矢継ぎ早に言いたい放題の女を黙らせるべく、俺は腕に絡みついていた女の手を掴んで引き剥がした。
Aは何も悪くない。浮気の原因なんて俺にしかないし、こんな女にとやかく言われるような問題ではないのだ。
Aは女にひどい言葉を浴びせられたにもかかわらず、何も言い返さないどころか顔色ひとつ変えない。それが逆に怖くて、俺は固まってしまった。
「……そうですね」
CY「A、」
『認めるってことは、別れてくれるってことで良いのかしら？』
CY「おい、お前いい加減に…」
「ご心配なく。もう別れ話は済みましたので。あとはお好きにどうぞ」
今まで8年間一緒に過ごしてきて、初めて、Aの冷たい声をきいた。
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作者名：にょるなび | 作成日時：2018年2月20日 19時
