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「…おれ、俺…どうしたら……」
『辛いね、大丈夫。…全部、私に任せて』
記憶が、頭に流れ込む。
「でも、俺は、許されないことを……」
『……大丈夫だよ、だから…ね。落ち着いて』
『…しゃー、くん』
口から、記憶のカケラが零れる。
それは、忘れてはいけなかったもので。
……ああ、そうだ。思い出した。
彼は、私の患者の1人だった。
彼の名は、シャークんという。
彼は、何の罪も持たないヒトだった。
ただ、ここに迷い込んでしまっただけなんだ。
それでも、私達は慈悲を与えなかった。
ここは、最期の場所だから。
*最期は平等に訪れる。そうだろう?
逃がさないために。
仕事を全うするために。
そのためだけに、シェフという役割をつけて。
ここに、無理矢理縛り付けたんだ。
…そうだ。
わ た し が "彼" を こ ろ し た 。
過去に捨ててしまったはずの心が。
刺されたかのように、苦しくなる。
ころした。わたしが、彼の人生を。
こわした。わたしが、彼の全てを。
居た堪れなくなって、部屋を飛び出した。
*……バカなヤツ。
ぽつり、と誰かがつぶやいた。
*_______もう、引き返すことはできないのに。
その声は、ヒトリしかいない部屋の中で、
静かに溶けていった。
・ ページ10
あの人がいなくなった今、
部屋には私と彼以外いない。
彼はまだ、動かない。
もうすでに死んでるのではないか、という程に。
彼に、近寄った。
甘く、穢れた血の匂いに、鼻腔が刺激される。
思わず、意識が持っていかれそうになる。
諦めれば、楽になれるということも わかっている。
けれど、どこかで見た彼を。
記憶の断片にいる彼だけは、
思い出さなくては
そうケツイして、また、彼の元へと向かう。
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿彼の顔を、覗き込んだ。
人形のように、整った顔立ち。
女性のように、黒く長いまつ毛。
健康的なペールオレンジの肌に似合わない、
紫みを帯びた下瞼。
『辛いね、大丈夫。…全部、私に任せて』
記憶が、頭に流れ込む。
「でも、俺は、許されないことを……」
『……大丈夫だよ、だから…ね。落ち着いて』
『…しゃー、くん』
口から、記憶のカケラが零れる。
それは、忘れてはいけなかったもので。
……ああ、そうだ。思い出した。
彼は、私の患者の1人だった。
彼の名は、シャークんという。
彼は、何の罪も持たないヒトだった。
ただ、ここに迷い込んでしまっただけなんだ。
それでも、私達は慈悲を与えなかった。
ここは、最期の場所だから。
逃がさないために。
仕事を全うするために。
そのためだけに、シェフという役割をつけて。
ここに、無理矢理縛り付けたんだ。
…そうだ。
過去に捨ててしまったはずの心が。
刺されたかのように、苦しくなる。
ころした。わたしが、彼の人生を。
こわした。わたしが、彼の全てを。
居た堪れなくなって、部屋を飛び出した。
ぽつり、と誰かがつぶやいた。
その声は、ヒトリしかいない部屋の中で、
静かに溶けていった。
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作者名：さくさくパンダ | 作成日時：2023年8月26日 13時
