救済思想 (ページ6)

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『封じる…？それに隠し部屋って……』

理解が、追いつかない。

隠し部屋？人？
私と同じヒトがいるの？

私の仕事は、こんなことじゃない。
私は、神さま。堕として助けるのが仕事なんだ。

堕としただけじゃ、意味がない。

なんで、

なんで、そんなことをするんだろう。
そんなこと意味はない、はず……でしょ？

頭がぐちゃぐちゃになっている時に、
あの人の声が耳に、脳に届いた。

* お前に "理解すること"は必要ない

ぐちゃぐちゃだったものが、
ふわり、と溶けて消えていく。

あの甘い蜜に、内側から毒されていく。

　

* 私の言うことを聞いているだけでいい

* …いいな?

じっ、と目を見つめられる。

血のように見えていたけど、
今ではルビーのように見えてきた。

綺麗、だなあ。
その赤い、美しい瞳の奥に、私の姿が見えた。

＿＿＿＿＿＿＿ああ、なんて醜いんだろう。

『…うん』

惚けた思考のまま、
あの人の言葉に、肯定を返した。

その後のことは、よく覚えていない。
全て、あの人の言う通りに動いた、だけ。

記者と画家を、鎖で縛って。
薬剤師に注射を打って。

神父に酒を飲ませて。
えっと、それから………？

ぼんやりとしているせいで、
何をしたか思い出せない。

ただ、自分の手を
悪に染めてしまったことだけは覚えてる。

罪悪感が背を伝った。
こんなことはよくない、と自分でも思う。

助けなきゃ、そこまでが仕事なんだ、と思う。

＿＿＿＿＿＿＿＿でも。

でも、それが、あの人の幸せなら。
私も、幸せなんだ。

自分の仕事?救済？
どうだっていい。あの人にしたがっていれば。

こうすれば、楽になれるから。

＿＿＿＿＿＿＿＿＿だから。

『ねえ、次はどこに行くの？』

*そうだな、次は……

永遠に、この時間が続けばいい。

あの人が私を
必要としてくれる、この時間が。

「……Aさん？」

誰かが、私の名前を呼んだ。

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