救済思想 (ページ18)

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GROUND FLOORには、既に二人が待機していた。

紫の薬剤師。黄の神父。
二人ともまだ状況が掴めていないようで、混乱しているのだろう。

神父、か。あまり好きではない。厄介だ。
あぁ、紫の薬剤師………
確か、名前は＿＿＿＿＿＿＿

「…スマイルさん」

心のうちに留めておくはずだったが、
口に出ていってしまったようで。

小さな声で呟いただけなのだが、彼の耳には届いたようだった。
焦ったような表情で勢いよくこちらを振り向いた。

その時の様子は、あの頃と同じで。

「…Aさ、俺、あなたがいないと____」

＿＿＿＿＿ああ、本質的には、何も変わらないんだ。
これならすぐに、元に戻す事も可能だろう。

なんせ彼は、そのためにここに来ていたのだから。

もう一度、あの感覚を思い出させれば。
＿＿＿＿＿＿＿きっとすぐに堕ちてくるだろう。

階段を降りながら、絶望的な希望を見出す。

「……A、さん」

人は、自分のことを呼ばれると反応してしまうのか。
彼の声も、私の耳に届いてしまった。

彼が私を呼ぶ声は、酷く震えているように思えて。

それは、まるで＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿

……別に、そんなこと考えなくていいか。
私は、やるべきことを、果たせばいいだけだから。

声を無視して、赤の記者と青の画家の方へ振り返った。

………。

『……こちらが、GROUND FLOORでございます』

『皆様が集まるまで、ごゆるりとお休みくださいませ』

お辞儀と共に、にこり、とが得意な笑みを添えて。

私はすぐに思考を切り替えた。

さぁ、あとは彼一人だけだ。

……行きたくないが、行くしかない。
……一番会いたくない、厄介な相手。

考えただけでため息が出そうになるが、ぐっと堪えて。

なるべく神父の横を通らぬようにして、
エレベーターへと向かっていく。

「…ッ貴女＿＿＿＿＿＿！」

誰かが、呼び止めてくれた声が聞こえたような気がした。

＿＿＿＿振り向いてはいけない。
＿＿＿＿返事をしてはいけない。

＿＿＿＿＿＿＿全ては、愛する人のために。

……うん。だから、その声もきっと気のせいなんだ。

＿＿＿＿＿＿＿＿もう、罪は、償いきれないのだから。

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