幸せを呼ぶ桜【黄】 (ページ9)

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岩本さんは窓際に座って、違う場所で張り込んでる部下となにやら無線でやりとりしていた。その真剣な横顔はいつものようにちょっと眉間にしわが寄ってる。

佐久間さんがビニール袋から二つ飲み物を取り出して、ひかる～って呼びながら手渡しに行くのをそっと目で追う。

『えっ』
岩佐「「ん？」」
『あ、いや……』
岩「これ？」

そう言って首をかしげながら、手にしたタピオカをちょっと持ち上げる岩本さん。

佐久間さんのだとてっきり思っていたそのタピオカは、間違いなく岩本さんの手にあって。うまっ、って嬉しそうに飲んでるんですけど……。

え、え、えぇ？！あれは誰？！

佐「ひかるホントそれ好きだねぇ」
岩「これが一番上手くね？」
佐「飲み比べたことねぇよ笑」

岩本さんと佐久間さんが仲良く話しているのを聞きながら、私は無言で今のこの動揺ができるだけバレないように残りの物をそっと冷蔵庫にしまう。

ダメだ。私はあんな人知らない。

いつも眉間にしわを寄せていたあの強面の岩本さんが、あんなに目をくしゃくしゃに笑うなんて誰が想像できた？？

『……可愛い』

佐「なーにがかわいいの？」
『ぅえ！？』
佐「えぇ？！そんな驚かれたら俺もびびるんだけど！笑」

Aまじで変な奴だなぁってにこにこ笑う佐久間さん。あなたに言われたくないんですけどね。

岩「お前らうるせぇよ」
佐「Aが驚かすからさぁ～」
『驚かしたの佐久間さんじゃないですか！』

やいやい佐久間さんと言い合ってると、

岩「どっちもどっちだろ」

佐久間が2人いるみてぇ、って岩本さんがまた楽しそうに笑う。

あぁ、だめだ。鬼上司だとばかり思っていたはずなのに。

その笑顔を佐久間さんにではなく私だけに向けてくれないかな、なんて。そんな事よぎった自分に驚いて慌てて頭を振ってかき消した。