＊オオカミさんにはご用心。#Taisho ページ37
「ん…っ、はぁッ…」
そうして夜が深く落ちる頃、
大昇にもようやく限界が訪れる。
「っ…、Aっ…」
「大昇っ…」
私は大昇に赦しを乞うように、
大昇は私に赦しを与えるように、
互いに熟れた唇を寄せ合った。
「─！」
待ち望んだ絶頂で、
熱く、大きく実った果実から
とびっきりの甘くて熟恋(こ)い果汁が注がれた。
─
散々焦らされて臨んだ絶頂に手放しかけた意識を引き止めたのは胸に伸し掛かった重みだった。
「…大昇？」
全ての欲を吐き出した大昇はまるで電池が切れたようにそのまま私の胸の上に倒れ込んできた。
数秒と経たず聞こえてきたのは規則正しい静かな呼吸。
これはもしかして─そっと顔を覗き込む。
「…寝ちゃった？」
そこにあったのは、まるで小さな子どものようなあどけなくて可愛いらしい寝顔だった。
ほんの数秒前までのサディスティックなオオカミさんは見る影もなく、それは間違いなく私のよく熟知(し)ったいつもの大昇で。
「大昇くーん」
まだ紅いままの頬を柔く擽ってみる。
「ん〜…」
あんな大人のキスをくれた唇もむにゃむにゃと動いて静かな寝息を零すだけ。
あまりに無防備で安らかなその寝顔はあんなにおかしいくらいに高鳴っていた胸を静かに鎮めていくのに、反対にまたどうしようもないくらいの愛おしさを募らせる。
見たことのない大昇の大人の顔に驚いてドキドキしたのもほんとうだけれど、
あんなに少量のお酒で酔ってしまうまだまだあどけなくて幼い大昇にホッとしている自分がいるのもほんとうで。
だから結局私は、大昇のどんな顔にも、どんな声にも、どんな瞳にも、どんな仕草にも、どんな言葉にもこのひだりむねを狂わされて、
そうしてまた恋という気持ちに酔わされていくんだろう。
「大昇、お酒は程々にしよっか、…ね？」
大人でサディスティックなオオカミさんも嫌いじゃないけれどちょっとばかし刺激が強すぎて私の心臓が保たないので、
やっぱりまだまだ甘えんぼでヤキモチ妬きでヘタレチキンな可愛い大昇くんでいてください。
「んん〜……A…、」
「だいすき……」
一体どんな夢を見ているのか、
私の胸の上で眠る大昇はそれは幸せそうな顔をしていた。
fin.
Image song
♪『ミックスジュース with luz』しゅーず
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作者名：愛夢 | 作成日時：2022年6月6日 14時
