恋を、君と。❷ (ページ35)

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＊オオカミさんにはご用心。#Taisho ページ35

どうやらアルコールが押してしまったスイッチは健全な男の子の純粋な情欲だけじゃないと気付いたけれど、もう遅い。
ぐらりと憶えた眩暈も果たしてアルコールのせいか、それとも。
獲物を前にした飢えたオオカミの瞳に捕えられて、もう逃げ場はないとじんわりと痺れた脳が降参を告げた。

「……ここじゃイヤ……、ベッド……。」

力の入らない両腕を精一杯に伸ばして抱っこをせがむと大昇は瞳を細めて上機嫌に頷いた。

─

大昇は脱力してソファに沈んだ私を恭しく軽々とお姫様抱っこで寝室へと運んで真っ白なシーツの上に寝かせた。
ぼんやりとした頭でぼーっと大昇を見つめていると、さぁようやく本番だと言わんばかりに大昇は徐にシャツを脱ぎ捨てた。

「っ…！///」

露になったのはドラマの役作りで鍛えられた逞しい身体。
必要のない筋肉はいらないとあまり鍛えはしない普段の大昇の身体も程よく筋肉のついた締まった身体なんだけれど、その破壊力は段違いで一気に頬に熱が集まって思わず眼を逸らしてしまう。

「A？…もしかして、照れたの？」

私の瞳に再び大昇の身体が映されたのは、
大昇の大きな手のひらが私の頬を捕まえて視線を引き戻されたから。

「っ…///」

反論もできない私の、熱の集まった頬を手の甲で撫でて、大昇はまたキスを降らせた。
けれどそれはピーチの残り香を微かに置いていくだけの一瞬の戯れ。

「あっ…」

思わず、驚くことに、それは無意識に、
私の唇は一瞬で離れていった大昇の唇を、追いかけてしまっていた。

そんな私を見下ろして、大昇が、わらう。

あぁ、やっぱり─もう一つのまさかも確信に変わる。
アルコールが呼び醒ましてしまったのは、
情欲と、それはサディスティックなもう一つの仮面(カオ)だった。

─

今の大昇の眼には、私は宛らもぎたての熟した果実にでも見えてるんだろうか。
白い俎板(ベッド)の上に寝かされて、やさしく脱がされて、露になったその実は甘いキスを注がれたお陰で十分に熟れて『さぁ召し上がれ』とオオカミさんに差し出される。

そんな光景を前に、大昇は真っ赤な舌を覗かせて自分の唇をぺろりと舐めた。
あまりに官能的で刺激的なその仕草に頬はまた熱を集めて止まなくて、ひだりむねは痛いくらいに鼓動を打つ。
真っ赤な舌も、わらう唇も、妖しく光る双眸も、私の知ってる彼を未知(みし)らぬ誰かに魅せるから。
それはそう、満月の夜に姿を変身(かえ)るオオカミのように。