恋を、君と。❷ (ページ4)

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君と、六月の恋を。#Taisho ページ4

最悪だ。
さっきまで晴れてたくせに突然の大雨。
最近巷で大はしゃぎのゲリラ豪雨というやつに、あろうことか彼女と久しぶりのデート中に見舞われてしまった。

「A、もうちょいがんばって」

「うんっ、大丈夫」

生憎傘は持ち合わせてなく、Aの手を引いて大雨の中を走る。

「あ、あそこで雨宿りしよっ」

見つけたのはシェルターのついたバス停。
俺とAは命からがらそこへと逃げ込んだ。

「うっわ、びっしょびしょ…Aは？ってびしょびしょに決まってるか」

「うん、もう靴の中までびっしょびしょ」

全く最近のお天道様の気分屋具合は本当に困る。
何もよりによって久しぶりの彼女のデート中に突然ゴキゲン斜めになってこんなに大泣きすることはないと思うゾ。
泣きたいのはこっちだ。

「A、ごめん。ちゃんと天気予報見てなくて…」

「何で大昇が謝るの。私だってちゃんとチェックしてなかったし大昇のせいじゃないよ。それに大昇と手繋いで土砂降りの街中走るとか、何かドラマみたいでちょっと楽しかった」

Aはそう笑って俺の濡れた髪や顔をハンカチで拭いてくれた。
曇天の少し薄暗い空の下、雨でしっとりと濡れたAは何だかいつもと雰囲気が違って見えてふいにドキッと心臓が跳ねる。
いつもはヒマワリみたいなその笑みも、今は雫を乗せた紫陽花みたいで見慣れなくて、Aの指が触れる度にらしくなく鼓動が早くなっていく。
Aのこと、結構知ってるつもりでいたけれどそんなことはなくてこんな風にまだまだ知らない顔があるんだな。
それを知る度にきっと今みたいに心臓は忙しなく高鳴って、また一つAのこと好きになるんだろう。
そう思ったらこんな雨も悪くない。…と、思いかけたけど…、

「あ…、」

ここで、大事件発生。

「ん？どしたの大昇」

何と、何と…っ、
この雨のせいで濡れたAの服が、
透けてるではありませんか。
幸い、ここは人気が少なくて歩いてる人は周りにチラホラいるくらい。
だけどだからといってこのままの状態でいさせていいわけがない。
少しでも今のAの姿が他の男の眼に触れようもんなら俺は富士山をも噴火させかねない。

「A、ちょっと…」

手招きをした俺にAは小首を傾げて不思議そうに歩み寄る。

「なに？」

「これ着てて」

絶対に今のAの姿を他人の眼に晒す訳にはいかない。それが今の俺の最大のミッションだ。