忘れな草の恋 30

30-46 擦れた声 ページ46

■ RyeoWook ■

上の住人達が無事ｼｳｫﾝ兄さんを引き取ってくれたが、僕らの所には既に眠ってしまったｼﾝﾄﾞﾝ兄さんが残った。

もう随分と肌寒くなって来たし誰かのﾍﾞｯﾄﾞで寝かせようかという案も出たが、酒も飲んだからかいつもよりいびきが凄くて…そのままｿﾌｧで寝かせる事になった。

充分に布団を掛けたからきっと大丈夫。

そうして自室に戻ってすぐにﾍﾞｯﾄﾞに横になったが、部屋の電気は点いてないけど枕元に置いてある照明はまだ点いたまま。

横に顔を動かしてみると、ｲｪｿﾝ兄さんは仰向けの状態だった。

ﾘｮｳｸ「兄さん…、寝た？」

そう声を掛けてみると兄さんは動かずに「いや…」と短い答えを返して来た。

僕は寝返りを打って兄さんの方を向き、眠れないのかと問い掛ける。

ｲｪｿﾝ「いや…」

ﾘｮｳｸ「今日の兄さん、ちょっと変だったね。何か隠し事があるんじゃないの？」

ｲｪｿﾝ「いや？そんな事ないぞ？」

今度はこちらに顔を向けたが、どんな顔をしているのかはっきりと分からない。

こんな事なら部屋の電気点けとくんだった。

ﾘｮｳｸ「あえて…論点のすり替えしたでしょ。わざわざあそこで愛してるなんて言わなくて良いよね」

ｲｪｿﾝ「いや…愛してるんだ。本当に…お前と同じくらい」

ﾘｮｳｸ「僕は兄さんが本当にAを愛してても良いと思ってるよ？兄さんはAの良き理解者って感じだし」

ｲｪｿﾝ「……いや、そんな事ないぞ。全然だ」

兄さんはこちらに寝返りを打ち、擦れた声で小さく笑ったけれど、絶対に何か隠してる。

いつもなら少し苛々して、話してくれないならもう知らない！みたいに怒ってしまうんだけど、今はそんな気分になれなかった。

遅い時間だしとか、寝てないからとかなら良いけど、兄さんの擦れた声が何だか哀しげに聴こえたんだ。

ﾘｮｳｸ「ねぇ、兄さん。僕、兄さんの事本当に好きだよ？」

ｲｪｿﾝ「ん、俺もだぞ」

ﾘｮｳｸ「いつでもどんな事でも想いを共有したいと思ってる。抱えきれなくなったら一緒に持ってあげるから、兄さんが辛くなる前に言ってね？」

言った後、兄さんの返事を待たずに、おやすみと言って照明の灯りを消した。

素直に何でも言いそうな僕だけど、実はこう言う事を改めて言うのは苦手なんだよ…。

ｲｪｿﾝ「ﾘｮｳｸ…ありがとな」

暗闇になった部屋に兄さんの擦れた声がする。

本当は気になってるよ？でも…今は訊かない。

でも…本当に一人で悩まないでね。

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