忘れな草の恋 30

30-41 口を開くための鍵 ページ41

■ YeSung ■

ｶﾝｲﾝ「そんじゃ、とりあえずはこの辺でお開きだよな」

ｶﾝｲﾝが肩を揉みながら立ち上がると、数名のﾒﾝﾊﾞｰも立ち上がって身体を伸ばす。

俺の目の前でもｳﾆｮｸが身体を伸ばしたが、また眩暈がしたのかふらりと身体が傾き、ﾄﾞﾝﾍが慌てるようにして支えた。

ﾄﾞﾝﾍ「大丈夫か？！」

ｳﾆｮｸ「ん…今のは…やばかった」

瞼を固く閉じて辛そうに息を吐き出すｳﾆｮｸに、ﾄﾞﾝﾍは長時間自分に付き合わせてしまって悪かったと詫びている。

ｳﾆｮｸ「良いってば。それよりちゃんと考えろよ？また話聞いてあげるから」

ﾄﾞﾝﾍ「うん！ｳﾆｮｸ…やっぱり俺が愛しているのはお前だけだよ！」

そう言って抱きつこうとしたﾄﾞﾝﾍだが、今日何度目かの拒否に合い、しかもそれならAは愛してないって事だな、と意地悪まで言われて泣きそうになっている。

他でも皆が色々しているが、こうして見ていると普段と何ら変わらない。

ﾄﾞﾝﾍもすっかり元気を取り戻したが、すぐに和解出来るだろうか。…本当の、という意味だが。

Aはﾄﾞﾝﾍを嫌ってないし、むしろ好きだと思う。それにAは人を責めないから表面上の仲直りは容易いだろう。

でも心の中に閉じ込めたままの傷…なのか、はたまた別の何かなのか…はまだ分からないが、それが元に戻るだろうか。

ﾄﾞﾝﾍ云々…きっとA自身の問題だと思うから余計な事は言わなかったが。

俺が全てを話すのを拒否したのは、一つはもちろんAため。もう一つは皆に心配を掛けさせないため。

何か下手に言わない方が良いんじゃないかと考えた。

そしてもう一つは、ﾋﾁｮﾙ兄さんとｳﾆｮｸの口を開くための鍵に使うため…。

俺自身も誰かに相談したい気持ちが多くあって、何にせよ大っぴらには話さない方が良いだろうと判断したのだ。

でもどうやってﾋﾁｮﾙ兄さんにどう話を切り出そう。

ｲｪｿﾝ「ﾋﾁｮﾙ兄さん…今、何考えてる？俺はどうやって兄さんと話そうか考えてる」

皆が騒ぎ出した事を良いことに、身体の中で口だけを小さく動かして兄さんに話し掛けると、兄さんもﾋﾟｸﾘとも動きもせず―、

「……俺もお前と一緒だ」

と、短い答えを返して来た。

ｲｪｿﾝ「でもあと俺には…ｳﾆｮｸも必要なんだけど…」

そう言うと、さっきはみじんも動かなかった兄さんが俺の方にﾁﾗﾘと顔を向けたが、俺は誰にも悟られたくないから横目だけ向けて体制を変える事はしなかった――。

30-42 俺様、困惑。→←30-40 やっぱりかっ！

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す