忘れな草の恋 30

30-39 こら、おいこら、 ページ39

■ LeeTeuk ■

逃げるようにしてｷｯﾁﾝへとやって来て、小さく息を吐き出しながら冷蔵庫から水の入ったﾍﾟｯﾄﾎﾞﾄﾙを取り出す。

ｳﾆｮｸが皆が気になる様な言い方するから…。でも言ってくれて良かった。

ｼﾝﾄﾞﾝが言う様にｷｭﾋｮﾝはうちの可愛いﾏﾝﾈだけど、れっきとしたﾗｲﾊﾞﾙなのだからもっと焦るべきだったのかも知れない。

でも焦ったらダメで、しっかりと見ないといけないものを見極めて、でも身近なところに沢山のﾗｲﾊﾞﾙがいて、やっぱり焦って…。

あぁ……今回の恋は本当に難しい。

深々と溜め息をつきながら食器だなからｸﾞﾗｽを取り出し、水を並々と注ぐ。

酒は一滴も飲んでいないけど、頭も気分もすっきりさせたくて今しがた注いだ水を一気に飲み干した。

…そう思ったらｷｭﾋｮﾝの方が何かやらかした感があるよね。酒に酔って軽く襲った感じ…。

Aは酒に強いからちゃんと意識があっただろうし、その事もきっと憶えているはずなのに、ｷｭﾋｮﾝとは普通に接している。

ていう事はきっとﾄﾞﾝﾍも、誤解を解けばきっと大丈夫。

でも…何か。大事な事を見落としているような気がするのは何故だろう。

僕も睡眠を摂るべきなのかも。明らかに脳が追い付いてない感じがして落ち着かない。

ﾘﾋﾞﾝｸﾞに戻ったら今度こそお開きになるだろうから、その前にとにかく愛するﾏﾝﾈに電話を掛けなくては。

耳に当てた携帯から出るｺｰﾙ音を聴きながら、ｸﾞﾗｽに今度は少量の水を注ぐ。

ｸﾞﾗｽを口に運んだ時にちょうど留守番電話ｻｰﾋﾞｽに接続された。

ｲﾄｩｸ「え、ちょっとｷｭﾋｮﾝ…」

ｸﾞﾗｽの中に発した声は少しこもった音に変わる。

そのままｸﾞﾗｽを傾ける気にはなれず、すぐに手放して再度ｷｭﾋｮﾝに電話を掛けた。

ｺｰﾙ音が増えて行く度に焦り、落ち着きがなくなって行く。

色んな想像が膨らんで、その中には少し如何わしいものもあって…何しろ彼は前科持ちだから。

そうこうしている間に、また留守番電話になって。それでまた掛けるけれど出なくて。

更には自分の上に跨っていたAの事を思い出し…。

ｲﾄｩｸ「こら、A！それはダメ！」

……いや…違った。間違えた。

ｲﾄｩｸ「おいこら、ｷｭﾋｮﾝ！出ないと怒る！」

携帯電話相手に怒って再度電話を掛けたものの、これで出なかったら……どうしよう。

どこにいるのかも分からないのに、とりあえず家から飛び出してしまいそうな勢い…。

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