忘れな草の恋 30

30-33 論点のすり替え ページ33

■ RyeoWook ■

子供みたいな言い合いをするｶﾝｲﾝ兄さんとｲｪｿﾝ兄さんを必死で止めるﾄﾞﾝﾍ兄さん。

何でもお魚さん的には今かなり良い感じに頭が働いているらしくて、早く早く…と脱衣所でのAの様子を聞きたがっている。

ｲｪｿﾝ「こちらは逆に頭が働かなくなっているのだ。待ちたまえ」

ｲﾄｩｸ「ｲｪｿﾝにも眠気が来たのかな。大丈夫？」

静かに頷く兄さんはぼやっとした顔をしていて、確かに眠いのもあるのかも知れないけど、僕はわざとなんじゃないかなと思ってるんだけど。

ｲｪｿﾝ兄さんはたまに、話を変えたい時に自ら不思議ｷｬﾗを装う事がある…と僕は勝手に分析している。

兄さんが不思議な事を言えば皆にはいつも通りに見えるし、突っ込むだけ面倒くさい、と話を流される事が多いから。

ｲｪｿﾝ「Aは俺にも何も話さなかったが、ﾄﾞﾝﾍを怒らせたかも知れないと言って気にしていたのは本当だ」

ﾄﾞﾝﾍ「……やっぱりそうなんだ」

ｶﾝｲﾝ「そんだけか？結構な時間、脱衣所にいただろうが」

ｲｪｿﾝ「それは……色々していたから遅くなってしまったんだろう」

そう言って皆の顔を見渡しながら、顔面を崩壊させていくｲｪｿﾝ兄さん。

ﾄﾞﾝﾍ「何？その顔。その色々って？」

ｲｪｿﾝ「うむ…いやな？抱きしめたくなって抱いていた。それからそのまま歌を一曲ﾌﾟﾚｾﾞﾝﾄして、あとはｸﾘｰﾑを拭き合いっこしたりしていたんだ」

恋する男達は目を見開き、外野側では舌打ちをしたり、呆れたように息を吐いたり、微苦笑を浮かべたり…様々な反応を見せた。

それを隠すためにわざと不思議な事を言って話を逸らしたのかな…。

ｶﾝｲﾝ「お前良い思いしてるくせにﾄﾞﾝﾍにｷﾚてやがったのかよ」

ｲｪｿﾝ「良い思い？別に愛は囁いていないから安心してくれ。でも俺はAを愛している」

真顔で淡々と言うもんだから、ここにいる誰もが声も出さずに目を丸くした。

ｲｪｿﾝ「ﾘｮｳｸ、安心しろ。お前と同じくらいって事だからな？」

そんなにﾆｯｺﾘとした笑みを貰っても、僕としては別にﾔｷﾓﾁはこれっぽっちも妬いてませんけど、としか言いようがない。

皆が、特に恋する男達は安堵したように息を吐き出したけれど、何か引っ掛かる。

確かに兄さんはAが大好きだと思う。

だけどわざわざ“愛している”なんて言葉を使ったのは、それも論点のすり替えなんじゃない？

んー…やっぱり何かありそうだね。

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