忘れな草の恋 30

30-32 今日はこれで良い。 ページ32

■ KyuHyun ■

A「いや…何か今、ｶｻｶｻって音がしたような…」

そう言いながらもどこから音がしたのか分からないのか、Aはｷｮﾛｷｮﾛと辺りを見渡している。

それもそのはずで、俺達が今いる芝生の広場の周りには物と言う物がない。

振り向いた先には道があって、少し離れた場所に多分…何本か何の花か分からない花が咲いていて…たんぽぽみたいなちっこい花もある。

その傍に背の低い垣根…、手入れされてなくてぼうぼうだから草の固まりと言った方が良いかも知れない。

とにかくそう言うのがあるだけで、自然じゃない物と言えば道沿いのこれまた少し離れた場所にある外灯が一本あるぐらいだ。

ｷｭﾋｮﾝ「……風で垣根の草が揺れた…とか？または猫とか犬の仕業かな？」

A「あぁ、そっか。ちょっと過敏になっちゃった」

安心したように笑っているから、きっと俺の事を考えてくれたんだろう。

俺もAに迷惑が掛かると嫌だから再度辺りを見渡してみたが、やっぱり特に変わったものはない。

誰かが隠れられるとしたらあの垣根か外灯しかないが、多分俺の膝までくらいしかない垣根じゃﾘｮｳｸすら隠れられないと思うし、あんな細い外灯じゃ幾ら鰯でもはみ出るだろう。

俺の中のｷｭﾋｮﾝ達が言い争いを始める。

気にせずこのまま一緒にいられる時間を楽しもう、とはしゃぐｷｭﾋｮﾝ。

いや、用心するに越した事はない。帰ろう、と真面目なｷｭﾋｮﾝ。

えー、離れたくないし、それなら別に場所変えれば良いだけじゃーん、とちょっと軽めのｷｭﾋｮﾝ。

とりあえず今何時？時間を見ようぜ、と冷静に状況を判断するｷｭﾋｮﾝ―。

全部が俺だけど、まずは冷静な判断を…とﾎﾟｹｯﾄから携帯を取り出して時刻を確認した。

するとかなり良い時間で、しかも少し肌寒くもあって。

ｷｭﾋｮﾝ「A、帰ろっか。そろそろ寝ないと肌にも悪いもんな」

慌てるようにして両頬を押えるAが可愛くて、正直なところ離れたくはないんだけど…。

…この人の事を最優先に考えていたい。

A「もしかして…顔ﾃｶﾃｶ？またはｶｻｶｻ？」

ｷｭﾋｮﾝ「ううん？可愛い」

この言葉がすんなり口から出せるようになった俺と、もう！と俺の太ももを軽く叩いて来るA。

あえてﾆﾔﾘと笑って頭を撫でると、ブゥ…と拗ねるようにして唇を尖らせる。

きっと次に繋がる分の距離感は縮められたと思うんだよ。

今日はそれで良い。これで満足しよう。

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