忘れな草の恋 30

30-22 友情フィルター ページ22

■ SungMin ■

僕は鋭い視線を送っているというのに、ｼﾝﾄﾞﾝは焦る様子もなく、まず先に欠伸を優先させやがりました。

またもお前は何を言ってるんだよ。

ｼﾝﾄﾞﾝの大きな大きな欠伸は周りの皆にもうつってしまったようで、何人かが大口を開けて気の抜けた声を出す。

本気で気が抜けてしまうからやめて！

ｼﾝﾄﾞﾝ「んんっ、あー。落ち着いて？本気で分かるとは言ってないだろ？でも俺は、最初Aは少し面倒くさい人なんじゃないかと思ってた」

驚きを苛立つものが一瞬にして追い抜いてしまい、文句を言おうとして息を吸ったらｼﾝﾄﾞﾝが“待て”と言わんばかりに手を前に突き出して来た。

ｼﾝﾄﾞﾝ「何のﾌｨﾙﾀｰが掛かってるのかと訊かれれば、その時の俺には友情ﾌｨﾙﾀｰが掛かってたんだな」

ｿﾝﾐﾝ「友情ﾌｨﾙﾀｰ？」

首を傾げるとｼﾝﾄﾞﾝはまだ眠そうな目をｸﾞﾘｸﾞﾘと擦りながら頷いた。

ｼﾝﾄﾞﾝ「ｿﾝﾐﾝが落ち込んでるのを見たから」

一瞬にして頭が真っ白になり「へ？」と間抜けな声を出してしまったら―、

「あ！そっか！ｼﾝﾄﾞﾝ兄さんは、ｿﾝﾐﾝ兄さんとAが喧嘩した時が初めましてだったね！」

と、ﾘｮｳｸが言ってくれたおかげで頭を追いつける事が出来たけど―、喧嘩はしてません！

すぐにそう主張するとｼﾝﾄﾞﾝは、喧嘩だったらそう思わなかった。でもAが笑ってたから、と言った。

ｿﾝﾐﾝ「え？どういう事？」

ｼﾝﾄﾞﾝ「俺にはAが怒ってるようには見えなかったし、ﾊﾝｷﾞｮﾝ兄さんも怒ってないと思うって言った。それでもｿﾝﾐﾝは落ち込んでるし、そしたらｷｭﾋｮﾝがあの人は取扱いが難しいって言ったんだ」

ﾊﾝｷﾞｮﾝ「あぁ、言ってたね」

僕とﾘｮｳｸが知らないと言うと、二人はｷｯﾁﾝに行ってたんだとあの時の状況を教えてくれた。

ｼﾝﾄﾞﾝ「喧嘩なら二人ともが悪いんだろうって考えるか、どっちも悪くないって思ってたと思う」

あの時、僕には感じ取れた違和感は、初めましてのｼﾝﾄﾞﾝには見抜けていなかった。

だからｼﾝﾄﾞﾝにはただ僕が落ち込んでいて、Aは普通にしか見えなかった。

双方に違いがあっても、二人ともが同じくらいの付き合いなら、きっと何かがあったんだろうなくらいにしか思わない。

あくまでもあの日Aに初めて会ったから、親友である僕が落ち込んでいたらそちらの心配をしてしまうのは当然だと思う、とｼﾝﾄﾞﾝが言った。

30-23 溺れたお魚さん→←30-21 初耳

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す