忘れな草の恋 30

30-14 頭を過る。 ページ14

■ KyuHyun ■

黙りこくるAの頭を撫でながら、俺も色々思う事があった。

この人はどうしても内に秘めてしまう人なんだなと思う。

どちらかと言えば俺もそっちﾀｲﾌﾟだから気持ちが分からなくはないけど、でもさ…俺はそういう時は無理して笑わない。

周りに当たり散らすのは嫌だから苛々したものを出さないように心掛けるけど、でも実際は話を聞いて欲しいのが本音で。

自分から甘えるのは下手だから、仏頂面を出して兄さん達の方からどうしたんだ、と構ってくれるのを待ったりする。

口にすれば余計に腹が立ったり落ち込んだりする事でも、いつまでも身体の中に留まらせていつまでも苛々したりﾓﾔﾓﾔしたりするのは嫌だ。

誰かに聞いて貰えばすっきりしたりもするしな。

この人はｲﾄｩｸ兄さんより…酷い。

兄さんも大概の事を一人で抱え込んでしまって無理して笑ってしまう人だけど、ﾋﾁｮﾙ兄さんやｶﾝｲﾝ兄さんには少しは弱音も吐いていると思う。

それから兄さんの笑顔はたまーに構ってくれと物語っている時がある。

だけどこの人はいつもと何ら変わりのない笑顔を出す。

内に秘めてるものがあるのかも―、なんて誰も気づかないような穏やかな笑顔。悩みなんてなさそうな明るい笑顔。

特定の人は気付くかも知れないけど、顔に出さないのが上手過ぎるよ。

Aがさ、おかしな人じゃなかったら本当に全部見落としてしまうと思う。

ｷｭﾋｮﾝ「……Aは人とずれてるから良いんだよ。おかしなAでいてくれなきゃ困る」

Aはどう反応して良いか分からないのか少し困惑しているようだ。

ｷｭﾋｮﾝ「俺はずれてるAが好きだよ。だから自分をおかしいなんて言うなよ。な？」

A「…ありがとう」

そう言いながらも笑っているA。その原因は俺が照れているからだろうと思う。

俺の出す“好き”って言葉には恋愛感情が思いっ切り含まれているんだから、照れて当然だろーっ！

ｷｭﾋｮﾝ「笑うなよ…だから、何かちょっと格好つけた事がｽﾏｰﾄに言えないのが俺なんだって」

A「うん、ごめん。ね、今のｷｭﾋｮﾝも撮ってもいい？」

小首を傾げながら、革で出来た小さながま口のﾎﾟｰﾁを口元辺りまで持って来る姿は可愛いが―、

ｷｭﾋｮﾝ「ダメー！ムリー！没収！」

ﾎﾟｰﾁを取り上げるとAはブゥ…と実際に鳴きながら唇を尖らせた。

俺は…この人とどう付き合っていけば良いんだろう―。

そんな想いが不意に頭を過る。

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