足りない

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中学校に入学した。





「入学式ぐらい行きなさい」




そう言われ、不信感と恐怖を抱え、学校へと向かった。







案の定、馬鹿にされた。





私が教室の扉を開けた時の空気感。



未だに変わっていなかった。




でも、私の所に来てくれる人が数名いた。






「ごめんなさい」
「ずっと、謝りたかった」
「本当はいじめたくなかった」







味方がいたんだ。


少しだけ、心が軽くなる。




けれど、私の味方をしてくれる人はほんの少しだけ。




安心なんてできない。





そんな時に、転校生がきた。





「小林誠司です、野球が大好きです。よろしくお願いします」



黒く焼けた肌に、背が高く、整った顔立ち。




私も、野球が大好きだった。


本当はやりたかったけれど、こんな体じゃ野球なんてできない。




また、敵が増える。


そんな感じがした。





けれど、彼は違った。






『A、ちゃん？』




話しかけてくれた。


たまたま、私の席の後ろになって。




「えっ、と、野球、好きなの、？」



こうやって話しかけられるのなんてなかったから、どう言えばいいか分からなくドギマギしてしまった。








でも、友達みたいなものが出来て、正直嬉しかった。





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