Episode2 ページ5
｢.....。｣
女は氷野の動いた音に気づき、ゆっくりと振り返る。
赤色に染まった頬、赤色がついた中くらいの刃物。
女は静かに刃物を長い髪に近づけ、素早く手を動かした。
ｻｯ
月明かりに照らされた美しい茶色の髪は、ゆっくりと地面に落ちていく。
腰まであった髪は肩上まで短くなり、毛先に赤がついた。
｢お前は...無色の___?｣
そんな姿にすっかり見とれていた氷野は我に返り、恐る恐る女に問いかけた。
無色の女王、コイツを捕まえに氷野はここに来たのだから。
｢...周りは私をそう呼ぶ。｣
風が吹くと同時に、床に落ちた髪が散っていく。
女は、風の音より小さい声でそう言った。
｢君の事を、周りは警察と呼んでる。けど、君自身は警察じゃない。
目が__警察(正義)じゃないと訴えてる。
だから君は警察と呼ばれる資格がない。
...名前は、なに。｣
一つの窓に、握っていた刃物を投げ捨て女は氷野に尋ねた。
誰1人、姿を見せた者は生かさない女が。
生きている者は、姿を見たことがないという女が。
｢...犯罪者に名乗る名なんてない。さっさと捕まれ。｣
ｶｯ
氷野は息を深く吸いながら立ち上がり、一言零す。
ｻﾞｯｯ
｢君は_________ね、遼河(ﾄｵｶﾞ)。｣
女の行動は、ほんの一瞬。
氷野の少し前の窓辺に立っていた女は、いつの間にか氷野の後ろにいた挙句、氷野の胸ポケットから警察手帳を取って名前を見ていた。
それと同時に言った女の言葉も、聞き取ることが出来ず氷野は黙り込む。
｢明日の捜査会議で言ったら良いじゃん。.....連続殺人犯は"A"と名乗りました、って。｣
女は黒い笑みを浮かべ、氷野に向かって警察手帳を投げた。
Aと名乗ったその女は、夜風が吹くと共に氷野の前から姿を消した_____。
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作者名：アカツキ☆*�� | 作成日時：2017年10月6日 22時
