【Fischer's】ウミの記憶

19Marin ページ24

-silk side-




とんでもねぇ馬鹿野郎だ、俺は。



Aの手を握りながら、つくづく思う。






頭が痛い。破裂するぐらい。



複雑な感情が一気に脳の中に生まれて、細かく絡まっていく。



ﾌﾟﾙﾙﾙﾙ


｢あもしもし?｣

ン『あーシルク!!Aが全然電話出ないんたげど...。』


｢人混みだから聞こえねーんだろ、Aとは合流したから大丈夫。｣



ン『あホント?よかった......。それで、今すっごい混んでて身動き取れなくて...このままだと流れ的にイルカショー方面に行くんだよ。


イルカショーは外だから、広いし多分合流できるから。』



｢分かったショーんとこ行きゃいいんだな。切るぞ。｣





電話越しからも分かる人混み具合。




ｽﾞｷｯ


あぁ分かったって。


お願いだから治まってくれ。




___俺の頭を走る痛みは、"認めろ"と言っているようだ。




そりゃ認めたら、頭痛も含め全部楽になんだろうよ。





ｷﾞｭｯ


｢A絶対手ぇ離すなよ。｣


A｢...うん。｣

｢マサイもAの手離すんじゃねぇぞ。｣


マ｢任せろ安心して進むがいい。｣







海で気を失ってた時は、俺までもが凍っちまいそうなくらい冷たかったのに。




今は、こんなにも暖かい。





それも、俺たちのお陰だって言うつもりか?







馬鹿野郎。俺も大概だけど、Aだって充分馬鹿だ。






確かに他人から見たら、俺達7人すげぇうるせぇし元気なヤツらって思われんだろうけど。


それを"暖かい"ってAは言ってんだろうけど






人に温もりを与えられる程、俺らはんな器用な暖かさなんて持ってなかったわ。






俺達のお陰だってお前は言うけど。





お前のお陰だって俺達は思ってっから。








___認めていいかな。








年齢も、本名も、どこに住んでたのかも、何も知らねぇけど。








目を覚ましたあの時、やって来た"A"は知ってるから。




第1のお前は知らない。









俺が好きになったのは、Aだから。









ああ、頭痛も何も治まった。

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