【Fischer's】ウミの記憶

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自分に来るはずだった海の神の血が我が子に入り、しかもそれ以上の力を持ち___。





もちろん、母親は私を妬んだ。





私が自分の力に気づかないように、海の近くには絶対に出さない。



だから、崖から降りることを禁じたのだ。



支払いも何も終わった崖の上の家から、他の場所に引っ越すお金なんて、一人働きの母親にはできないことだし。







私を、家から出さなければ良いと。





何十年、私をこよなく愛し、





年齢を増すと共に強くなって行く力を、いつか自分の為に使わせようと。









赤ちゃんの頃から凶暴な野生動物を育て、大人になって懐いた状態で良いように使うようなもの。



母親の計画は、まさにそれだったのだろう。









でも、そんな生活もピークを過ぎれば諦められるもの。




人生投げやりで、適当に生きてきた私。







そんな時、家から飛び出そうと決断させたてくれたのは、海ではしゃぐ七人の人達で。






沢山遊んで、家に帰ってきて絶望的で。






今まで適当に生きてきた人生を、あの人達のお陰でしっかりとやり直したいって思えて。







けど、もう海にはあの人たちは来なくて。





連絡先も知らないし、住んでる場所もお互い知らないし、



また会えるなんていう奇跡、ある訳ないって分かってたけど。









彼達を、崖の上で待って約1年。




やっぱり、姿は現れなかったの。








私を、さらって欲しかった。



ゆらゆら揺れる、波みたいに。






笑顔が眩しくて、心が広くて、何より暖かくて。








今思えば、







なんて、海みたいな人達だったんだろう。









嗚呼海の神、私はお前のせいで散々な人生を20年程過ごしてきた。





お前が与えた力が本物なら。








｢.........どうか、彼達とまた笑いあえる様に。｣









母親が、仕事でいない昼の時間。







恐れなんて何も無い。









私は、彼達を忘れずに崖から飛び降りた。

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