【Fischer's】ウミの記憶

23Marin ページ28

-Silk side-




嫌な予感が頭を過ぎる。




これまで、大切にしてた何かが、




大事にしてた何かが、






もうすぐで離れていきそうな、そんな予感が。




マ｢俺泊まってくわ。｣


｢おう。｣





水族館でAが倒れる少し前から、変な感覚はあった。




病室で目を覚ました時と比べたら、とてもじゃない程別人みたいな目付き。


何処か、遠くに行ってしまいそうなAの立ち姿。






だから俺は、Aの腕を離さなかった。




マ｢あ。......マジで海行くの?｣



｢あぁ、行く。......Aの頼みだから、仕方ねーだろ。｣




マサイはきっと俺と同じだ。




Aを見つけたあの場所、




そこにAを連れて行ったらどうなるか。


それを分かっている。






｢思い出したらその時はその時だ。...俺達が止める意味なんて無い。｣




マ｢.........。｣




久しぶりに、マサイの返答は無い。



人の話をよく聞いて、何かと返事を必ずするこいつでさえ




言葉が出てこない状況に陥ってる。








しょうがねーよ。たった数日間でこんなにも大事な存在になっちまったんだから。









そう、声掛けてやりたいけど。





それはきっと俺自身にも言わなければならない事だし、


第一その言葉は無責任だ。





何がしょーがねぇだ、大事な存在になったらから何だよ。







もし、俺が今二人になれたら。




思い切り自分を、気が済むまで殴り潰してやりたい。





Aの記憶が戻るなら、それがAの為だから、俺は勿論海に連れて行く。



けど、その反対で連れて行きたくない自分がいるんだ。








......俺の予感は、きっと的中するだろう。





Aが、遠くに行ってしまいそうだ。

24Marin→←22Marin

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す