【進撃の巨人】自由と信念_Ⅱ【ツイステッドワンダーランド】 (ページ2)

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あの一件から絡んでくる奴が減った。
目が合えば逸らされる。
肩が触れただけで遠ざかっていく。
分かりやすすぎる対応はどうやら此奴の癇に障ったらしい。

｢グルル……前までは突っかかって来てた癖に今更ビビりやがって……!!｣
｢……突っかかって来られた覚えもねェよ｣

否、覚えていない。
絡んできた奴等に関しては黙ってれば過半数は勝手に散っていったし、残りの半数は逆上して手を上げてきたところを返り討ちにしてやったから、彼としては”何かをされた”という認識がなかった。
本気で興味のなさそうな彼の様子に渋々といった様子でジャックも口を閉じる。
次の授業に備えて早くも準備を始めている彼。
ちら、と隣で熱心に何かをノートへと書き込む彼の文字を見てギョッとする。
紙面にぎっしりと見覚えのない文字が敷き詰められており、所々そこに赤色や青色でマークが付けられていた。
以前、彼が言っていたことを思い出す。
古代語は彼の住んでいる島の文字に似ている、と言っていた。

｢それ、お前の島の文字か？｣
｢……あァ、よく分かったな｣

アンタが自分で言ったんだろ、といえば本気で訝しげな目を向けられた。
どうやら覚えていないらしい。
分かってはいる。
彼はこの世界の何にも興味が無い。
元の世界に帰ることだけが彼を駆り立てる。
分かってはいる。
少し寂しく思ってしまうのは自分の我儘なんだろう。

｢方法探し、順調なのか？｣
｢……順調なわけねェだろ｣

苦虫を噛み潰したような顔。
この世界の常識も予備知識もない彼は、凄まじい勢いでミドルスクールまでの内容を叩き込んだ。
そして図書館に通い詰め、彼なりに拙い術式を完成させたりもしたが一向に完成の目処は立たず。
彼は分かりやすく焦っていた。
鍛錬は欠かさないどころか時間自体は増え、元の世界に帰る方法を見つける時間も一日の大半を占めるようになり、必然的に睡眠時間は減っていた。
彼は頭が良くない。
しかしこんな状況でそれを言い訳にする訳にも行かない。
自分の力で戻らなければ。
暫くしてクルーウェルが教室に入ってくる。
真剣な眼差しを向ける彼の横顔は、やはり以前よりも青白く、窶れてしまったように思えた。
ぴく、と耳が動く。
ジャックは獣人だ。普通の人間よりかは五感が優れている自信がある。
ぞわり、と嫌な予感(････)がした。
背筋を冷たい汗が滑り落ちる。
まずい。本能的にそう思った瞬間だった。

｢全員伏せろ!!｣